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リハビリテーション室ブログ(参考)

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【スポーツ・外傷】のリハビリテーション
【血液凝固科】のリハビリテーション

2023年4月24日前十字靭帯損傷での入院~退院までのリハビリ

みなさん、こんにちは。整形外科チームです。
今回は運動中に起こりやすい前十字靭帯損傷(ぜんじゅうじじんたいそんしょう)について当院の取り組みをご紹介します。

前十字靭帯は膝にある靭帯です(図1)。


▲図1:右膝関節正面
 
前十字靭帯損傷と聞くと選手同士の接触が多いサッカーや柔道で起こりやすいイメージかもしれません。
実は7~8割はバスケットやスキーなどで着地やターンなど、非接触時のほうが起こりやすいといわれています。

前十字靭帯損傷は手術しなくても日常生活は可能なことがありますが、靭帯の機能が低下し膝関節が不安定になることから、将来膝関節の変形が生じてくる場合があります。                      

適切なリハビリテーションを行って、高いパフォーマンスでスポーツ復帰できるように、一緒に頑張りましょう。

当院で手術された際のスケジュールの一部をご紹介します。
当院では、自身の半腱様筋腱(図2)を採取し、損傷した前十字靭帯を繋ぐ前十字靭帯再建術を用いています。
 

【入院】

手術前日 筋力や関節可動域、動作能力などリハビリで術前評価
手  術 自身の半腱様筋腱(図2)を採取し前十字靭帯を繋ぐ


▲図2:右下肢後面
  

手術後

手術後はドンジョイ装具(図3)を使用    


▲図3:7日目の様子

1日目  手術した足に体重をかけない
    車椅子や松葉杖で移動できるように練習         
    筋力トレーニング指導

7日目  松葉杖で体重の50%荷重する練習

14日目 退院
    松葉杖なしで全体重を荷重する練習 
    膝を90°まで曲げる練習 
 

【退院】

診察を受けながら引き続き外来でリハビリフォローします。

手術後28日目 膝120°まで曲げる練習
手術後42日目 膝を曲げる角度制限なし

その後は術後3カ月でジョギング開始を目指し、徐々に負荷をあげていきます。
スポーツ復帰目指して頑張りましょう!

以上、整形外科チームでした。

 

2023年3月23日心不全を知って体調管理に役立てましょう

こんにちは、内部障害チーム*1です。
みなさん、心不全という病気をご存じでしょうか。私たち内部障害チームがリハビリを担当する患者さんの中で、実は心不全の患者さんが最も多くを占めています。
「心不全の患者さんが元気に退院していただくこと」がリハビリの目標ですが、患者さんご自身が心不全を理解した上で、ご自身で体調管理を行っていただき、退院後も長くお元気に過ごしていただくことも重要だと考えています。

入院中は、医師・看護師・薬剤師・栄養士・リハビリ等、さまざまな職種が協力しながらこの目標を達成できるように努めています。
今回は、心不全とはどのような病気か、わかりやすくご説明します。
心不全という病気についての理解や、体調管理に役立てていただければと思います。

*1 内部障害チーム:循環器・心臓血管外科・内科・外科・泌尿器科リハビリ等の内部障害を全般的に対応しているチームです。

心不全とは?

心不全とは何か?
心臓の最も大事な役割は、全身に血液を送ることです。
心不全は、心臓のポンプ機能が低下し全身に血液が送れず、様々な症状が出現する状態のことを
言います。心臓の機能が低下したために、運動機能が低下し、最終的に生命を縮めてしまう可能性があります。
治療により症状の改善が期待できますが、悪化と軽快を繰り返して進行していくこともあります。
心不全の原因

様々ありますが、代表的な原因となる病気を挙げていきます。

・冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)
冠動脈とは心臓に酸素と栄養を送る血管です。冠動脈の流れが悪くなる狭心症や、冠動脈の流れが途絶える心筋梗塞になると、心臓の筋肉に十分な酸素や栄養が心臓に届かず、心臓のポンプ機能が低下します。

・弁膜症
心臓の中には4つの弁があり、血液の流れが一方通行になるように調節しています。この弁が硬くなって開きが悪くなり血液が流れにくくなってしまう病気(狭窄症)や、弁が閉まらなくなり血液が逆流してしまう病気(閉鎖不全症)が弁膜症です。狭窄症、閉鎖不全症どちらも全身に十分に血液が送れない状態になります。4つの弁のうち、異常が起こりやすいのは、全身に血液を送り出すために常に大きな力がかかっている心臓の左側にある僧帽弁と大動脈弁です。

・高血圧
血圧が高い状態が続くと、高い圧力に対応するために血管の壁が厚く硬くなってきます。心臓から血液を送り出すために絶えず強い力が必要となり、徐々に心臓の筋肉が厚くなり心肥大を起こします。この状態が続くと、心臓が疲労して心臓のポンプ機能低下を起こしてしまいます。

・不整脈
心臓は本来一定のリズムで全身に血液を送っています。不整脈は、このリズムが不規則になったり、過度に速くなったり遅くなったりすることで、心臓のポンプ機能の低下を起こしてしまいます。

・心筋症
心筋症とは心臓の筋肉の病気です。徐々に心臓の壁が薄くなって拡大してくる拡張型心筋症と、心臓の壁が厚くなる肥大型心筋症があります。
原因はいまだ明かされていませんが、遺伝的背景、免疫異常、炎症などが関係していると言われています。

心不全の症状とは?

高血圧や不整脈、他の心臓病をお持ちの方でも症状が軽く、心不全の状態だと気付かないことが多いと言われています。次の症状に心当たりはありませんか?

・息切れや疲れやすさ
心臓の機能が低下していると、通常息切れを感じないような軽い動作や運動で息切れが出現します。
また息切れのせいで疲れやすくなり、以前より歩くのが遅くなる、家事が疎かになってしまうこと等があります。
このような症状は、加齢によるものだけではないかもしれません。

・急なむくみ(浮腫)や体重の増加
心臓のポンプ機能が低下してしまうと、血液の流れがスムーズにいかなくなります。その結果、血液の量を増やすことで代償しようとします。
身体に血液をたくさん溜め込むようになり、全身の血管に血液が滞り、うっ滞すると浮腫みを引き起こします。
また、心臓から十分な血液が送り出せず、腎臓に流れる血液が少なくなると尿の量が減り、体内に水分が貯留します。
足の甲やすねの部分が浮腫んできたり、体重が増えてしまうことがあります。
急な浮腫や体重の増加(前日より1~2㎏の増加)の際は、心不全が原因で起こっているかもしれません。

・夜間の呼吸苦
心臓と肺は血管で繋がっています。心臓のポンプ機能が低下した状態では、心臓や肺の中で血液の流れが滞ってしまい、呼吸が苦しくなります。
平らに寝ていると血液が下半身から心臓に戻る際に重力の影響を受けないため、心臓に戻ってくる血液の量が多くなり、呼吸苦を起こします。
就寝2~3時間後に突然苦しくなって目覚めてしまいます。このため上半身を起こして心臓に戻る血液量を減らして呼吸を楽にしようとします。

自分で症状を確認しましょう!以下に当てはまる症状にチェックしてください!

  • 簡単に息切れしてしまう。
  • 歩くのが遅くなった。
  • 体重が前日より1-2kg以上増加している。
  • 足が浮腫んでいる。
  • 寝ている時に寝苦しくなり起き上がるが、しばらく座っていると苦しくなくなる。

チェックが1つでもあれば心不全の可能性があるため、近くの病院・診療所に相談しましょう!

身体の見方.1

息切れや疲れやすさはどんなふうに出てくるの?

普段何気なく行っている家事動作や買い物などで息切れを感じることがあります。
疲れやすく、いつも通っている場所に行くのにかなり時間がかかってしまいます。

また下記のような指標もあります。


※やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニックHPより引用

医療現場でも使われているものです。参考にして下さい!

身体の見方.2

体重測定の方法:どんなタイミングで計ればいいの?

朝起きて、トイレに行った後、朝食前に測定しましょう。毎日同じ時間帯に測定するようにしましょう。

身体の見方.3

浮腫みの見方:どこをどんな風にみたらよいの?

足の甲や足の脛の部分を10秒程度押します。そのままへこみ、痕が残ってしまうかどうかみます。
心不全による浮腫の特徴は下肢の浮腫です!

まとめ

今回は心不全がどのような病気なのか、まとめてみました。
心不全は悪化と軽快を繰り返すことがあり、長く向き合っていかなければいけない病気です。
体調の悪い時だけでなく、毎日ご自身で体調管理をすることで心不全悪化のサインを見逃さないようにしましょう。
今まで症状のない方でも、心不全の原因となる病気をお持ちの方は、心不全症状の出現に注意してください。
そして、心不全かしら?と疑った場合は、早めに相談や受診をして、悪化させないように元気に過ごしていきましょう。

2023年2月15日当院における橈骨遠位端骨折のハンドセラピィ

みなさん、こんにちは。作業療法チームです。
当院には、手外科センターがあり、手のケガや病気の患者さんの治療を行っています。
私たち作業療法士も手外科専門医と連携し、手のケガ・病気の患者さんに対するリハビリテーション(ハンドセラピィ)を提供しています。
今回は冬の時期に多い橈骨遠位端骨折(とうこつえんいたんこっせつ)について、ご紹介いたします。

橈骨遠位端骨折とは

高齢者が手をついて転倒した際に、前腕の2本の骨(橈骨:とうこつ、尺骨:しゃっこつ)のうち橈骨が手首周辺で骨折することを指します(図1)。

図1:外傷のない右手首正面のレントゲン写真(左)、左橈骨遠位端骨折のレントゲン写真(右)

尺骨も同時に骨折することが多く、また高齢者だけでなく小児や若年者でも交通事故や転落、スポーツなどで生じることもあります。
骨折の形態によって固有の名称が付いています(図2-A~C)。


図2-A:外傷のない手首側面のレントゲン写真


図2-B:Smith骨折や掌側Barton骨折(骨折した骨が掌側にずれている)


図2-C:Colles骨折(骨折した骨が背側にずれている)

症状

手首に強い痛みや腫れ、熱感が生じます。時には変形も見られます。
合併症として、手根管症候群(親指~薬指の半分に痺れや物をつまめないなどの症状。詳細は2021年4月28日付のブログ参照)や、少し時間が経過してから親指の第一関節を動かす腱が切れることもあります。

治療 および リハビリテーション

保存療法

受傷4~6週間は患部をギプスまたはギプスシーネ固定(以下ギプス固定)して安静を図ります。
主治医の判断でギプス固定が外れたら、スプリント*(図3参照)を使用しながら手首の運動を開始します。
骨癒合が得られた状態で荷重練習や筋力強化を図り生活復帰していきます。


             
図3:当院で作成している「コックアップスプリント」です。ギプス固定より簡易的に固定ができ、ご自身で取り外しができます。
*:スプリントとは、簡単に説明すると患部を固定するものです。用途は様々ありますが、橈骨遠位端骨折の場合は患部の保護目的に作成することが多いです。

手術療法

骨折が関節内まで及んでいる場合や転位(ずれ)が強い場合は手術適応となります。
手術方法としては、骨折部を整復(骨折した箇所を正しい位置に戻す)してロッキングプレート(図4)という金具を使って固定する術式が主流となっています。
骨折型や年齢などによって、ワイヤー単独固定あるいはプレートとの併用、創外固定や人工骨の追加など、臨機応変に対応します。

図4:ロッキングプレート(このプレートで骨折部を固定します)

リハビリテーション

当院の術後リハビリは、おおよそ下記の通りで進めていきます。
骨折を生じた場合、損傷されるのは骨だけではありません。
レントゲンでわかる骨に目を奪われがちですが、実際はその周辺組織(骨膜、靭帯など)も同時に損傷されています。
合併損傷がある程度修復するまでの安静保持のため、また手術侵襲による疼痛や腫脹を軽減するため、当院では術後一定期間のギプス固定を行っています。
ギプス固定した状態ですが、手術直後から主治医の指示の下にリハビリを行います!!!

時期 リハビリ内容 日常生活
手術施行後 ・ギプス固定中。固定中も、肩と指を積極的に動かしていきます ・固定部位は濡らさないように注意ください
・なるべく手は心臓より挙上してください
手術2~3週間後 ・ギプス固定除去後、スプリント(図3)を作成します。
 スプリントは疼痛が強い時の他、外出時や夜間時などに装着します
・手首を動かす練習を開始します
・箸や洗顔、洗髪など負荷がかからない両手動作から始めます
手術2ヵ月後 ・握力、つまむ力を入れる練習を積極的に行っていきます ・軽い力仕事を始めます
骨癒合 ・荷重訓練を開始します ・制限なし

~手のリハビリに関して、今後もOTチームは頑張ります!~

2022年12月26日第13回おぎくぼリハビリの会を開催いたしました!

こんにちは。リハビリテーション室です。
2022年11月16日(水)に第13回おぎくぼリハビリの会を開催いたしました。
新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、2019年11月15日に第12回を開催して以来、ちょうど3年ぶりの開催となりました。
とはいえ、以前のように当院レストランを会場にすることはできず、webでの開催でしたが、外部から18名の方にご参加いただきました。

今回は「四肢骨関節外傷の診かた」をテーマに整形外科部長/リハビリテーション科部長 岡﨑医師より「骨折画像の診かた ~上肢を中心とした総論~」、整形外科水間医師より「大腿部近位部骨折の診かた ~診断・治療・リハビリ~」について講演して頂きました。
当院リハビリスタッフも参加し非常に有意義な時間になりました。

地域のリハビリテーションに関わる医療者にとって有用な会になるよう、患者様に還元できるような知識や手技を今後も継続して発信していきたいと思います。

\
症例発表する岡﨑整形外科部長

 
\
司会進行する織田副科長(左)、中野主任(右)

2022年12月13日立ち上がる時のポイント

こんにちは。訪問リハビリテーション室です。

訪問リハビリでご自宅に伺っていると、利用者様のご家族様から「どこを持って起き上がりを介助するのか」や「歩くときにはどのように手伝えばいいのか」 といった“体位変換や移動などの介助方法”について質問されることがあります。

3月のリハビリ室ブログで”ベッド上で移動させる際のポイント”を、6月のリハビリ室ブログで”起き上がりの介助方法”をご紹介しました。

今回は”立ち上がる時”の ポイントをご紹介いたします。

人間にとって「立つ」という動作は、”立っている姿勢を保持する”ことも大変ですが、”立ち上がる時”の方が瞬発的な筋力が必要となるため困難なことが多いです。
そこで、”座っている姿勢”から立っている姿勢”になるまでのポイントをお話します。
立ち上がる時のポイントは大きく分けて2つです。

①立つ前の座っている姿勢
②立ち上がる時の重心移動

この2つを意識できると立ち上がる動作が少し楽になると思います。

①立つ前の座っている姿勢

✓骨盤   :できるだけ骨盤を立てて座りましょう 
✓足の位置 :足底は地面に接地、可能であれば膝より内側に、体に近い位置に置きましょう
✓背中   :背もたれから離して、骨盤の真上にあると良いです

②立ち上がる時の重心移動

✓骨盤  :後ろに倒れないようにしましょう
✓重心  :おへそを前に出すようなイメージで前方に移動させます

よく「立つときはお辞儀をしながら立ちましょう」と言われることがあると思いますが、背中だけを丸めて頭を下げても重心を前に移動できず、効果的ではありません。
お辞儀をする際は骨盤を立ててから頭を下げるようにすると良いと思います。
イメージとして自分の斜め上の物を取ろうとするとその延長で立ちやすくなることもあります。
また、手すりなども少し遠くで掴むと立ち上がりやすくなると思います。
参考にしてみてください。

2022年11月02日食事の形態について

こんにちは。言語聴覚療法チームです。
暑い夏が終わり、涼しい秋の季節になってきました。
みなさんは秋と言えば何を思い浮かべますか?
読書の秋やスポーツの秋、芸術の秋と色々な秋がありますが、言語聴覚士としては、やはり「食欲の秋」ですね。
そこで今回は、食欲の秋にちなんで当院の食事の一部をご紹介させて頂ければと思います。

言語聴覚士は、飲み込みのリハビリ(摂食嚥下リハビリテーション)を行っており、飲み込みにくい・食べにくい方に対して、適切な食事の形態(以下、食形態)を選定し提供させて頂いております。

では、具体的にどのような食形態があるでしょうか。
ここでは主食についてご説明します。

1つ目は米飯です。米飯は飲み込みの機能(以下、嚥下機能)が問題なく保たれている方に提供しております。おそらく、一番馴染みのある形かと思われます。
2つ目は軟飯です。軟飯は米飯と同様に比較的嚥下機能が保たれている方に提供しておりますが、主に硬いものが食べにくい方に提供することが多いです。
3つ目は粥です。粥は当院では3分粥・5分粥・7分粥・全粥と分類しておりますが、3~7分粥までは主に外科疾患や腹部症状に合わせて提供することが多いです。また、特に噛む力や噛んだ食べ物をすりつぶす力が低下している方に全粥を選定することが多いです。


  • ▲3分粥

  • ▲5分粥

  • ▲7分粥

  • ▲全粥

4つ目はムース粥です。この記事を読んでいる方からすると「なんだそれは」と思われる方が多いかと思われますが、こちらはなんとムース状にした主食となっております。
作り方は至ってシンプルで、全粥にスベラカーゼというムース状にまとめてくれる粉を入れてミキサーで混ぜると出来上がります。
主に噛む力やすりつぶす力、飲み込む力が著しく低下している方に対して提供しております。
みなさんは粥を食べている時に、時間が経つとシャバシャバになっていたことはありませんか?それを離水というのですが、嚥下機能が低下している方はその離水した粥でむせ込みや誤嚥を招く事があります。
このムース粥は離水することなく安全に食べられる形態です。


  • ▲ムース粥

5つ目は重湯です。粥を作る過程で出来る上澄みの部分を重湯と言い、流動食の主食ではこの重湯を提供しております。
米粒が一切含まれていないため、こちらも外科疾患や腹部症状に合わせて提供することが多い主食です。


  • ▲重湯

このように、当院でご用意している主食の種類にはたくさんの種類があります。
患者様の全身状態や嚥下機能に応じて、適切な食形態を選定しご提供しております。
それでは、今回のお話はここまでです。

2022年10月17日寝たきりにならないために—大腿骨頚部骨折のリハビリテーション

みなさん、こんにちは。整形外科チームです。
今回は大腿骨頚部骨折(だいたいこつけいぶこっせつ)について、当院での取り組みを紹介します。

大腿骨頚部骨折って?

大腿骨(股関節)内側にある頚部と呼ばれる部分の骨折をいいます。

大腿骨頚部骨折の原因は?

①転倒

加齢に伴い筋力、バランス機能が低下し転倒しやすくなると言われています。
また、大腿骨の頚部はその形状から、転倒の際に外力が集中しやすく骨折が起こりやすい部位です。

②骨粗鬆症

加齢による女性ホルモンの低下、カルシウムを吸収する能力の低下が骨密度の減少の原因となります(骨粗鬆症は女性に多く、女性ホルモンの低下が起因していると言われています)。
カルシウムやビタミンなどの摂取不足、日光不足(日に当たらない)、運動不足や喫煙、アルコールの過剰摂取も原因となります。
例えば、骨粗鬆症があると尻もちをついただけで骨折となる場合もあります。

治療方法は?

手術療法

原則は手術が適応となります。
骨折の程度により骨接合術または人工骨頭置換術のどちらかを選択します(例外的に保存療法を選択することもあります)。
骨の表面には折れた骨を修復するために重要な外骨膜という組織があります。しかし、頚部にはそれがありません!
骨の構造、血管流的に骨が付くのに不利な場所、通常の骨癒合がしにくいのです。

また、大腿骨頚部には血管が通っており、骨頭部に栄養を送っています。
骨折により血管が損傷すると血流が悪くなり骨頭部分の壊死がおきます。
つまり、大腿骨頚部骨折は手術とその後のリハビリがとても重要となる疾患なのです。

寝たきりにならないための、リハビリテーション

大腿骨頚部骨折は、高齢の方に多く、受傷後は疼痛や歩行能力の低下から寝たきり、閉じこもりとなるケースもあります。
寝たきり、閉じこもりになると認知症の発症、肺炎、褥瘡などの合併症につながることもあります。

そうならないために!!!
当院では手術前後でリハビリの介入をしています。

術前

術後のリハビリスケジュールの説明と合併症の予防に努めています。

術後

術直後は体調に合わせて体を起こしていきます。
術翌日より介入を開始します。主治医からの指示内容によりますが、人工骨頭置換術の場合は翌日より「歩行」の許可が出ます。

高齢の患者さんの場合は、リハビリに気が進まない時もあり、そんな時は「ちょっとトイレに行きましょう」「散歩に行きませんか?」など、違うことで声をかけて、少しでも動いてもらうようにしています。
声を掛けるスタッフを変えたり、看護師さんに声掛けしてもらうと患者さんの気持ちが向くことがあり、患者さんのやる気が高まるよう病棟スタッフ皆で働きかけています。

順調に進めば3週間程度で自宅に退院されます。
その際は自主トレーニングの指導や、退院後は外来リハビリテーション、訪問リハビリテーションの案内も可能です。また、自宅に退院するまでにもう少しリハビリが必要な方は、近隣のリハビリテーション病院へ案内しています。

以上、整形チームでした!

2022年9月2日熱中症のリスクと予防について

地球温暖化の影響でしょうか。都市部の夏の平均気温が上昇し、熱中症、脱水症、横紋筋融解症で緊急入院となる方が当院でも増えています。

「横紋筋融解症(おうもんきんゆうかいしょう)」はあまり聞き慣れない病気かと思います。真夏日/猛暑日が続くこの時期に、熱中症、脱水症と合わせて起こりやすい病気です。体温調節機能が破綻し、身体の深部温度が40℃を超えると筋細胞が変性して壊れ、症状として筋肉痛、筋力低下、脱力、麻痺、ミオグロビン尿(赤褐色尿)が生じます。脱水症状があるとさらに筋肉が損傷しやすい状態となります。さらに進行すると腎不全となります。

脱力や麻痺が継続すると寝たきりとなってしまいます。体の炎症が治まり次第、なるべく早い段階でリハビリを開始することが大事です。ベッドから起き上がったり、座った状態で出来る手足の運動を行ったりすることから始め、その後に歩く練習をして、入院前となるべく同じ状態で退院して頂くように当院では努めています。指先の痺れや力の入りにくさがある場合も作業療法士が状態を評価し、リハビリをしております。

暑さ指数(WBGT)とは

熱中症を引き起こす条件には、気温が高い、日差しが強いなどの環境条件のほか、乳幼児や高齢者、暑さに慣れていないなどの体の条件、長時間の屋外作業などの行動条件があります。これらの条件の下で、体から熱が放出されにくくなることで熱中症が発生しやすくなります。

外出や運動頻度が多い方は、より環境条件に気をつけて行動する必要があります。その指標として暑さ指数(WBGT)というものがあります。
暑さ指数(WBGT)とは、体と外気との熱のやり取り(熱収支)に与える影響の大きい「気温」「湿度」「日射・放射」「風」の要素をもとに算出された指標です(単位は気温と同じ摂氏度[℃]で表しますが、その数値は気温とは異なります)。熱中症リスクを判断する数値として、運動時や作業時だけでなく、日常生活での指標としても活用されます。

暑さ指数(WBGT)に応じた、日常生活や運動時の注意事項

日本生気象学会では「日常生活に関する指針」、公益財団法人日本スポーツ協会では「熱中症予防運動指針」を出しています。
どちらも暑さ指数(WBGT)が28℃以上(厳重警戒)になると熱中症リスクが高まります。
ただ28℃未満の場合でも運動や激しい作業をする場合は定期的に休憩を取り、積極的に水分や塩分を補給するなどの対策をとるようにしましょう。

関連リンク:熱中症の原因・なりやすい環境や暑さ指数(WBGT)について知ろう | 熱中症ゼロへ – 日本気象協会推進 (netsuzero.jp)

体温の上昇に気をつけましょう

人間の体は体温を一定に保とうとして、体温上昇時には体熱放散作用が働き体温を下げようとします。

体熱放散作用には・・・
①皮膚の血管拡張や血流量の増加による熱の放散
②発汗による水分蒸発作用
③呼吸の促進

などがあります。

マスク着用した状態でジョギングした場合は「呼吸障害」を起こしやすいです。
マスク着用していない場合と比べて心拍数や呼吸数、血中二酸化炭素濃度、体温が上昇するなど体に負担がかかることや、口腔内の渇きを感じにくいため注意が必要です。

他にも・・・

  • 唇やのどが渇いてきたな、と感じたらコップ半分程度の水を飲みましょう。
  • たくさんの汗をかいたときには、汗で失われたミネラルを補うためにスポーツドリンクなどで塩分や糖分を取りましょう。
  • 衣服の襟元や袖口などに適度にゆとりのある衣類を着用しましょう。
  • 窓に日射断熱フィルムを使用したり、すだれで日よけをしましょう。
  • 運動は朝や夕方の涼しい時間帯で行うようにしましょう。

気象庁で発表している暑さ指数(WBGT)も参考にしてください。暑さ指数が28℃を超えると熱中症になる方が多くなるといわれています。

出典:『公益社団法人日本理学療法士協会 理学療法ハンドブック シリーズ14在宅での危険予防』

*心臓にご病気があり主治医より塩分、糖分制限がある方は摂取し過ぎないよう注意しましょう。

当院ではリハビリ室、患者さんのお部屋の窓を開け換気を行いつつ、冷房や空調を適宜調整しコロナ対策をしながらリハビリを実施しています。
みなさんも引き続きコロナ対策と熱中症対策をしながら、健康的な生活を送って頂けたらと思います。

2022年8月10日ばね指には「ストレッチ」が有効です

みなさん、こんにちは。作業療法チームです!

当院は手外科センターを併設しており、手の怪我や疾患をもつ患者さんに対して治療を行っています。
私たち作業療法士は、医師とコミュニケーションを図り、患者さんにあったリハビリテーションを提供しています。

突然ですが、ばね指というものをご存知でしょうか? 今回は、当院に来院される患者さんにも多い、ばね指について紹介していきたいと思います。

ばね指とは

指の関節部における、腱と腱鞘(腱の通りをよくするトンネル)との間に生じた腱鞘炎のことです。
40代~50代に発生し、男性より女性に多く発症します。特に日常的に手指をよく使う人、中でも、親指と中指に発症しやすいと言われています。


  

症状

手のひら側の指の付け根に小さな腫瘤を触れ、圧痛が出現します。
症状が悪化すると、指を曲げて伸ばそうすると、伸びないもしくは、ばねの様に引っかかるといった症状が出現します。

▼動画はこちら

治療

一般的な治療法としてはステロイド注射が挙げられ、症状が改善しない場合は手術にて腱鞘を切開することもあります。過度に使用せず、安静にすることも大切です。また、ストレッチも有効とされており、今回はみなさんでも簡単にできるストレッチの方法をご紹介します。

①屈筋腱ストレッチ

②腱鞘(A1 pulley)ストレッチ

~手のリハビリに関して、今後もOTチームは頑張ります!~

2022年6月28日起き上がり介助方法のポイント

こんにちは。訪問リハビリテーション室です。

訪問リハビリでご自宅に伺っていると、利用者様のご家族様から「どこをもって体を起こしたらいいか」や「歩くときにはどのように手伝えばいいか」 といった“体位変換や移動などの介助方法”について質問されることがあります。

22年3月のリハビリ室ブログでは“ベッド上で移動させる際のポイント”をご紹介しました。
今回は”起き上がり介助方法”の ポイントをご紹介いたします。

起き上がり介助の際のポイント

~基本編~

▼動画はこちら

~応用編 体格差がある場合~

▼動画はこちら

起き上がり介助をするときのポイントは“円を描くように動かす”ことです。
また、座った後の後方転倒やベッドからずり落ちてしまうことも多いので、姿勢が安定するまで介助するように心がけてください。

以上、訪問リハビリテーション室でした。

2022年5月31日食事介助の重要性を伝える研修

みなさんこんにちは。言語聴覚士(Speech Therapist,以下ST)チームです。

ゴールデンウィークも終わり、新入職の方も徐々に仕事に慣れ始めてきた頃だと思います。当院では新入職者に対して、職種・部署の垣根を越えた研修にも参加してもらい、広い知識を習得する機会を設けております。今回、STは新人看護師向けに「食事介助」についての研修を行ったので、その内容についてご説明させていただきます。

以前、STのブログでも紹介しましたが、私達は言葉のリハビリ(失語症に対する訓練や発声訓練など)だけではなく飲み込みのリハビリ(摂食嚥下訓練)も行っています。昼食時の介助はSTが行えますが、それ以外の時間は基本的に病棟の看護師に依頼をしています。そのため、食事介助は看護師にとっても必要なスキルであり、毎年、研修を開催しております。

まずは座学にて摂食嚥下機能や食事介助の知識について講義を行い、理解を深めました。
その後すぐに患者さんへ食事介助を行うのではなく、実技として一度看護師同士で実際に食べ物を使用し介助をし合いました。

適切な姿勢として首を軽く前に倒して水を飲むことや、誤嚥しやすい食べ方としてゼリーを噛まずに飲み込んでみるといったことを体験してもらうことで、患者さん自身の気持ちを理解しやすく、食事介助の重要性をより実感できたのではないかと思われます。

そして講義と実技が修了したのち、実際に患者様の食事介助を見学・実施してもらいました。初めて患者さんに対して食事介助をすることに緊張をしている様子はありましたが、皆さん一生懸命に取り組んでいました。介助後に感想を聞くと、講義で学んだ通りにうまくできない場面もあり、食事介助の難しさを体感したようです。

患者さんが安全に食事をできるように、STは日々食事介助の技術を磨いております。今回の研修だけでなく当院の医療従事者に対しても、摂食嚥下機能の知識や食事介助方法を伝達し、患者さんにとって安全な食事となるようにサポートしていきます。

 

2022年4月30日意外と知らない? 杖の使い方

みなさん、こんにちは。
「転ばぬ先の・・」などと言われる杖ですが、正しい使い方をご存じでしょうか?
短すぎる/長すぎる杖を使用してぎこちなく歩いている方を見かけることもあれば、「杖は痛い足と同じ側に持つものだと思っていた!」と言われることもあります。
せっかく杖を使用するなら、正しく・安全に 使用していただきたいという思いから、今月は杖の使い方を紹介していきます。

杖には様々な種類(松葉杖など)がありますが、今回はT字杖を紹介します(図1)。


図1 T字杖

杖を使う前に確認!

杖先ゴムがすり減っていませんか?
すり減ったまま使用すると杖を着いた時に滑ってしまうなど、転倒につながるので危険です。
杖を販売している店には杖先のゴムがあると思いますので、すり減ってしまう前に交換しましょう。

1. 杖の長さ、杖を持つ手

杖の長さは、立った姿勢でおおよそ足の長さ、杖を床に着いた時に肘が軽く曲がる程度が良いと言われています。また、杖は痛みや麻痺がある足と反対の手で持ちます(図2)。
*円背(猫背)が強い方など、原則通りの長さでは具合が悪い場合もありますので、その際はかかりつけ医や理学療法士にご相談ください。

  • 杖の長さは足の長さ(股関節~かかとまでの長さ)
  • 杖を持つ手は、痛みや麻痺がある足と反対の手


図2 杖の長さと杖を持つ手

2. 杖の持ち方

杖の持ち手の形にもよりますが、一般的な杖の持ち方(図3)、間違った杖の持ち方(図4)は以下の通りです。

図3 正しい持ち方 図4 間違った持ち方
  • 人差し指と中指で杖の支柱を挟むように上から握る
  • 杖の向きは支柱を軸にして、持ち手の短い方が前
  • 持ち手の長い方のみ握っている
  • 杖の向きが逆(正しくは、支柱を軸に持ち手の短い方が前)

→適切に力が伝わらず、杖を着いた時に不安定になり、転倒リスクにつながります。

3. 杖を使用した正しい歩き方

“杖”と“痛みや麻痺のある足”を同時に着いて歩きます(動画参照)。
杖を持つ手が逆になると、ロボットのような歩き方になるので注意しましょう。

杖を使う際にはぜひこれらを意識してみてください。
ただし、以下のような場合は杖を持つ手にこだわりすぎなくてもよいかもしれません。

  • 杖がなくても歩けるけれど念のため持って出かける場合
  • 利き手と逆の手で杖を使用すると余計にふらついて危ない場合
  • 杖を持つ手や肘、肩などに痛みがある場合など

効果的に杖を使用し、ぜひ“転ばぬ先の杖”として活用してください。

~最後に~

2020年4月から始めた「リハビリテーション室ブログ」もおかげさまで3年目を迎えました。ブログのアクセス数も増え、当院のFacebookにもたくさんの“いいね!”をいただき、励みになっています。
今後もリハビリの紹介や役立つ情報などをお届けしますので、よろしくお願いします!

 

 

2022年3月31日ベッドの上で人を移動させるには

こんにちは。訪問リハビリテーション室です。

訪問リハビリでご自宅に伺っていると、利用者様のご家族様から”どこをもって身体を起こしたらいいか” や、”歩くときにはどのように手伝えばいいか” といった「体位変換や移動などの介助方法」について質問されることがあります。

そこで今回は”ベッド上で移動させる際のポイント”を紹介しようと思います。

1.身体の向きを変えるときのポイント

体位変換のコツは肩周囲(肩甲帯)と骨盤です。
脚や腕を把持して動かそうとしてもなかなか動きません。脚や腕を持つと骨折を起こしてしまうことがあります。ぜひ「肩甲骨と骨盤」を意識してみてください。

例)仰向けから右向きに変える場合

▼動画はこちら

2.身体の位置を変えるときのポイント

介助ベッドを使っていると、足側にずり落ちてしまい、頭側に戻す必要がしばしば生じます。クッション性の良いベッドは身体が沈んでしまい、身体をスライドさせることが困難なことが多いです。
そんなときのポイントは、ベッドと身体の接点を減らし、骨盤から効率よく力を加えることです。

例)ベッド上で頭側に身体を移動させる場合

〇良い例

▼動画はこちら

✕悪い例

人間の身体は小柄な方でも40kgほどあります。介助者が女性の場合はもちろんですが、男性でも一人で介助するのは大変です。介助者が(腰など)身体を壊してしまう事もあります。
参考にしていただき少しでも負担を減らすことができれば幸いです。

話は変わりますが、利用者さま、事業者さまなど様々な方にご支援頂き、当訪問リハビリテーション室は2022年1月を持ちまして開設から1年が経ちました。今後も成長していければと考えておりまので、これからもどうぞよろしくお願いいたします。

以上、訪問リハビリテーション室でした。

 

2022年2月28日手術後のリスクを減らす「胸腹部の手術前リハビリテーション」

こんにちは! 内部障害チームです。
今回は外科や心臓外科で行う「胸腹部の手術」前に行うリハビリテーションについてお話します。

皆さんは手術とともに手術後の障害の種類・程度、日常生活や社会復帰についてもご不安を抱いていると思います。
当院では患者さんの状態を手術前から把握し、手術後の様々なリスクやご不安を減らすために手術前から支援しています。
なぜ手術前からリハビリを実施するのか、どんな内容を行っているのか紹介していきます。

手術前に行うリハビリの目的と内容

大きくは、3つです。

  1. 早期にリハビリテーションを開始するための「事前オリエンテーション」
  2. 術後の痛みを最小限にするための「起き上がり動作の練習」
  3. 術後の肺の合併症を防ぐための「痰出しや呼吸法の練習」
1. 早期にリハビリテーションを開始するための「事前オリエンテーション」

昔は手術後の患者さんは、寝たきりで安静にしていることが多かったと思います。ですが近年では、なるべく早い段階で起き上がり、車いすに座る、歩くことで合併症のリスクを減らし回復が促されることで、早期に退院できる可能性があると言われています。

寝たきりによる弊害

  • 関節が動きにくくなる
  • 筋力が落ちる
  • 心肺機能の低下
  • 精神、認知機能の低下

回復を促していくために、術後の痛みや多くの管がついていても主治医の判断の下、リハビリを行うことがあります。痛みが強い場合は痛み止めを使用するなど、医師や看護師と連携を取りながら身体を起こしていきます。患者さんが手術後の状態をイメージできるように事前に説明をしていきます。

早期リハビリテーションの効果

  • 体力の回復
  • 身体機能の回復
  • 肺の合併症の予防
  • 入院日数の短縮
  • 腸閉塞の予防
2. 術後の痛みを最小限にする「起き上がり動作の練習」

1でお話したように手術後の起き上がりは痛みを伴うことが多いです。胸腹部の手術では腕や腹部に力を入れることで痛みが強くなる可能性があります。手術前に起き上がりの動作のコツを習得しておくと痛みが少なく起き上がることができます。

どんな方法で起き上がるか

*痛みのある場所を少し押さえることも効果的です

3. 術後の肺の合併症を防ぐための「痰出しや呼吸法の練習」

手術後は肺活量の低下や手術後の合併症で肺炎(肺の感染症で炎症が起きる)や無気肺(肺に空気が入らなくなってしまう)などが発生するリスクがあります。
手術前に創の痛みを最小にする痰の出し方や深呼吸の仕方を身につけることで肺の合併症を軽減することができます。

どんな方法で痰を出すか

*咳払いができる人はそれでも構いません

上記3つが手術前に行うリハビリです。
手術前には手術への緊張や不安、手術後は手術が終了したという安堵感はあると思いますが痛みや多くの苦痛の中で、リハビリとも向き合わなければなりません。それは、とてもストレスの高い状態だと思います。
手術前からリハビリのスタッフと顔を合わせ、不安や緊張を共有し、今後のリハビリについても知っていただくことでお気持ちが少しでも楽になれば・・・と思っています。

以上、患者さんに対する手術前のリハビリの効果についてお話しました。
ぜひ、参考にしてください。

2022年1月28日心臓リハにおける有酸素運動、無酸素運動

こんにちは! 心臓リハビリチームです!
2021年5月のブログでは、循環器疾患の患者さんでも運動が必要であることや運動の効果について、お伝えしました。今回は、有酸素運動と無酸素運動についてお話をしたいと思います。

有酸素運動とは?

有酸素運動とは、身体の中にとりこんだ酸素を利用してエネルギーを作りながら行う運動のことをいいます。比較的長い時間持続して行う運動で、ウォーキング、ジョギング、自転車やエアロビクス体操などのように全身をリズミカルに動かす運動です。

有酸素運動の心肺機能に対する良い効果は多数報告されており、循環器疾患の患者さんにおすすめしています。

当院のリハビリでは、病棟内歩行訓練や自転車エルゴメータを用いて有酸素運動を行っています。

無酸素運動とは?

無酸素運動とは、重量挙げや全力疾走といった短時間に強い力を必要とする瞬発的な運動のことをいいます。
無酸素運動は、心血管系に負担がかかるため、症状を悪化させたり危険な不整脈が出現したりする可能性があるため、循環器疾患の患者さんは注意が必要です。

当院のリハビリでは、主に自重(自分の体重)を用いた低強度筋力トレーニングを実施しています。注意点として、あまり力んだり息こらえをせずに、規則正しく呼吸しながら行うことを意識しています。

有酸素運動の方法は?

循環器疾患の患者さんには主に有酸素運動をおすすめしていますが、実際にどの程度で行えばよいのか、目安をご紹介します。

【どの程度の強さ?】
・軽く汗ばむ程度
・ややきついと感じる程度
・おしゃべりしても息切れがしない程度
での有酸素運動をおすすめしています。
当院のリハビリでは自覚的運動強度(Borgスケール)を用いて、患者さんに運動の強さを確認しています。
右の上の表でいうと13の「ややきつい」を限度に運動をしています。

【どの程度の時間?】
・1回の運動時間は30~60分程度が望ましいですが、20分ずつ2回に分けて合計40分でもよいとされています。
・1日の総歩数として、7000~8000歩を目指しましょう。
(日常生活の中で、たとえばエレベーターやエスカレーターを利用せずに階段を利用するなど、積極的に動くことを心がけましょう)。
<注意事項>
・起床後すぐや空腹時、食直後は体調を崩しやすいため、食後1-2時間たってから運動を行うようにしましょう。
・冬の寒い時期は血圧が上がりやすいため、露出部の防寒(手袋、耳当て、帽子、マスクなど)をこころがけ、日中の暖かい時間帯に行うとよいでしょう。

【1週間に何回の運動?】
週に3回以上運動を行うのが理想的です。日本循環器学会より出されているリハビリテーションに関するガイドラインによると、1週あたり3~5日の頻度で運動することがすすめられています。なかなか運動の時間が取れない方は、買い物や通勤時に歩く時間を作ると良いと思います。特に、冠危険因子(※1)を多数お持ちの方は、できれば毎日行うのが良いでしょう。ただし、翌日に疲れや筋肉痛が残っていたり、体調不良や血圧の変動のある日は運動を見合わせましょう。
※1 冠危険因子:動脈硬化を起こしやすくする要因のこと。高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、肥満などがあげられます。

以上、有酸素運動とその方法についてご紹介しました。
ぜひ、参考にしていただき、効果的に運動を続けていきましょう。また、運動療法を開始する際は、主治医に相談してから、安全に行いましょう。

2021年12月28日当院における母指CM関節症のハンドセラピィ

みなさん、こんにちは。作業療法チームです。
当院には、手外科センターがあり、様々な手のケガや病気の患者さんの治療を行っています。
私たち作業療法士(OT)も手外科専門医と連携し、手のケガ・病気の患者さんに対するリハビリテーション(ハンドセラピィ)を提供しています。

今回は症例数が多い母指CM関節症について、当院でのハンドセラピィを踏まえてご紹介いたします。

母指CM関節症とは
母指CM関節とは、親指の付け根にある関節のことです。この関節は鞍状関節という形状をしているため、母指は曲げ伸ばしだけでなく、つまみ動作(対立運動)を行うことができます。大きな動きが可能な関節ですが、その分、負担が掛かりやすいです。母指の使い過ぎや加齢によって関節軟骨の摩耗が起こりやすく、進行すると関節が腫れ、亜脱臼し母指が変形してきます。特に50代以降の女性に多いと言われています。


▲正常な方(写真左)と母指CM関節症の方(写真右)

症状

母指の付け根が腫れ、押すと痛みます。また、つまみ動作や母指を捻るような動作で強い痛みを生じます。
日常生活の中では「ペットボトルの蓋の開閉」「爪を切る」「包丁を握る」「洗濯バサミをつまむ」「箸で物をつかむ」など様々な場面で痛みが出てきます。さらに進行すると、母指CM関節亜脱臼や母指MP関節過伸展変形を伴い、母指がジグザクに変形し、母指が大きく広がりにくくなります。

治療 および リハビリテーション

治療①:保存療法

基本的には『母指CM関節をできる限り安静にして、休ませる事』が大切となります。当院では装具療法を第一選択としています。患者さんに合った装具を作業療法士が作成します。装具を作成する際に、母指を良い位置で固定することで、炎症が軽減して、痛みや腫れが緩和されることが多いです。炎症が強いときにはステロイド関節注射を行うこともあります。

装具療法

■短対立装具

母指の先端と人差し指~小指、手首は自由に使えるように作成します(写真参照)。
夜間を含めて、なるべく長時間の装具着用を3ヵ月続けて頂きます。装具着用中の注意点として、力を要する動作(包丁を握る、ペットボトルの蓋などの開閉、洗濯バサミの使用など)は、母指の付け根に負担がかかるため、控えて頂く必要があります。

■装具着用時

装具着用したまま、左記の様にペンを持って文字や絵を描いたり、箸やスプーンなどを持って食事をしたりすることができます。

治療②:手術療法

保存療法を行なっても症状が改善しない場合は手術療法が選択されます。手術には、関節形成術、関節固定術、靭帯再建術、第1中手骨骨切り術、人工関節置換術などあります。当院では関節形成術と関節固定術を主に行っています。

関節形成術とは
大菱形骨という小さな骨を切除して、関節の隙間を作成し、新たに関節を形成する手術です。関節形成と同時に、人工靭帯やご自身の腱を用いて母指短縮を防ぎます。母指の動きをある程度温存できる手術となります。欠点として、握力やつまむ力の低下、母指MP関節が過度に反ってしまう人には不向き、疼痛軽減まで時間を要することがある、などが挙げられます。

関節固定術とは
母指CM関節が動かないようにスクリュー、プレート、ワイヤーなどで固定する手術です。母指CM関節の除痛に重点をおいた手術であり、握力、つまむ力を要する人に向いています。欠点として、手のひらをテーブルにピッタリ密着できない、母指を大きく広げて大きいものをつかみにくい、水を漏れずにすくいにくい、などが挙げられます。

術後のリハビリテーション

全て医師の方針に基づいて、実施しております。
当院の術後リハビリは、おおよそ下記の通りで進めていきます。

時期 リハビリ内容 日常生活
手術施行後 ギプス固定。ギプス固定から出ている指、肘、肩を動かす練習 ・固定部位は濡らさない
手術1ヵ月後 ・ギプス固定解除後、装具作成
・痛みに応じて装具着用継続
・母指、手首を動かす練習
・箸や携帯などの操作開始
・入浴や洗顔の開始
手術2ヵ月後 ・握力、つまむ力を入れる練習 ・洗濯バサミや菜箸などの操作開始
手術3ヵ月後 ・力仕事を開始

~手のリハビリに関して、今後もOTチームは頑張ります!~

2021年11月30日屋内に潜む転倒の危険性

こんにちは。訪問リハビリテーション室です。

緊急事態宣言は解除されましたが、徐々に寒さが本格的になり、なかなか外出機会を増やすことができていない方も多いのではないでしょうか。社会とのつながりの減少や、活動量の低下はフレイルにつながってしまうリスクが高くなります。

フレイルに陥ってしまって危惧されるのは、転倒による骨折などの大きなけがをしてしまうことです。
消費者庁のデータによると高齢者の転倒転落を場所別に分類すると“自宅”が最も多く全体の48%を占めており、“介護施設”での転倒転落は全体の11%で屋内での転倒が全体の6割を占めるとされています。

以前当院にて転倒転落が原因で入院をされた方を対象に行った調査においても、屋内での受傷が全体の64%(図1)を占めておりました。


▲図1 受傷場所

つまり、転倒転落は屋内で過ごす時間が長くなっている今が起こりやすいと言えます。
そこで今回は、“屋内に潜む転倒の危険”“実際に行っている対策”を紹介したいと思います。

玄関

玄関は上がり框(あがりかまち)があることや、靴の着脱のため、しゃがみ込みが必要であったりと、転倒転落の起こりやすい場所です。
玄関の上がり框は10~20cmほどのことが多いですが、この高さは昇り降りには高く、立ち座りには低いため転倒転落のリスクが高くなります。

写真(図2)のように手すりと段差が一体となっている補助具であれば、昇り降りの際の安全性を確保しやすいです。


▲図2 玄関の手すり

また、玄関に椅子を置くと靴の着脱の際のリスクを軽減できます。

屋内

屋内にも部屋の間などに1~3cmほどの段差がありつまずきやすい場所です。
このような小さな段差は、段差として認識しにくいため、十分注意することができず転倒のリスクにつながります。

写真(図3)のように屋内であっても段差にスロープ(写真の丸囲み箇所)を設置する事で、つまずくリスクを軽減できます。


▲図3 屋内のスロープ

浴室

浴室は滑りやすく転倒リスクの高い場所です。
また浴槽に入る場合は、またぐ動作なども必要になり転倒のリスクが高いです。

洗い場にはシャワーチェア(図4)を置くことで転倒のリスクを軽減できます。また、立つ・座るなどの身体的な負担も減ります。


▲図4 シャワーチェア

手すり(図5)も浴槽の縁につけるタイプや壁に取り付けるタイプなど様々なタイプがあり、住宅環境や身体機能に合わせることが可能です。


▲図5 浴槽の手すり

その他

廊下などで直接壁に手すりを取り付けられない場合でも、置き型の手すり(図6)を配置することで動線を確保できる場合もあります。


▲図6 置き型の手すり

このように訪問リハビリでは身体機能や住宅環境にあわせた補助具の選定も行っております。
興味を持っていただけましたらぜひ担当のケアマネジャーにご相談ください。

以上、訪問リハビリテーション室でした。

2021年10月29日失語症の評価と訓練

失語症※1の訓練を行うに当たって、現在の言語機能(聴く力、話す力、読む力、書く力)について把握することが大切です。前回の記事で簡単な言語検査について触れましたが、今回は、さらに細かく評価する方法と訓練についてお伝えします。

※1 脳血管疾患にて生じる言語障害の1つです。言葉を思い出すことが難しかったり、物の名前が言えなかったりする症状があります。

評価方法

失語症患者さんの言語症状をより正確にかつ客観的に評価し、把握できる検査として、SLTA (Standard Language Test of Aphasia;標準失語症検査) があります。
この検査は、聴く、話す、読む、書くの4つのカテゴリーから構成されており、各カテゴリーの中には難易度の異なる小項目が設けられています。

小項目は全部で26あり、図版や物品を用いて検査を行います。検査では正誤だけでなく、検査中の患者さんの反応(答えるまでの時間、言い間違いなど)も評価材料になるので記録をしておきます。

各小項目は1から6までの段階に基づいて評価し、段階5以上を正答とみなします。その項目に対して正答数(段階5、6)が多ければ得意、少なければ苦手であると評価していきます。

それでは、分かりやすいように代表的な小項目を以下の図に挙げます。

<聴く> <話す>
単語・短文の理解
単語や短い文を聴いて、図版の中から正しい絵を選択する
口頭命令に従う
机に10個の物品を並べて、言われた通りに物品の操作をする
呼称
図版の絵をみて、物の名前を答える
単語・短文の復唱
ST(言語聴覚士)が言った単語や短文を繰り返す
仮名1文字の音読
図版に書かれている仮名1文字を読む
<読む> <書く>
漢字・仮名単語の理解
漢字や仮名で表記されたカードを見て図版の中から正しい絵を選択する
書字命令に従う
机に10個の物品を並べて、カードに書かれた文章の通りに物品の操作をする
漢字・仮名単語の書字
図版の絵をみて、物の名前を漢字や仮名で書く
漫画の説明
図版に描かれた漫画をみて、漫画の内容を文章で書く
<聴く> 単語・短文の理解
単語や短い文を聴いて、図版の中から正しい絵を選択する
口頭命令に従う
机に10個の物品を並べて、言われた通りに物品の操作をする
<話す> 呼称
図版の絵をみて、物の名前を答える
単語・短文の復唱
ST(言語聴覚士)が言った単語や短文を繰り返す
仮名1文字の音読
図版に書かれている仮名1文字を読む
<読む> 漢字・仮名単語の理解
漢字や仮名で表記されたカードを見て図版の中から正しい絵を選択する
書字命令に従う
机に10個の物品を並べて、カードに書かれた文章の通りに物品の操作をする
<書く> 漢字・仮名単語の書字
図版の絵をみて、物の名前を漢字や仮名で書く
漫画の説明
図版に描かれた漫画をみて、漫画の内容を文章で書く

これらの結果(段階)から、得意なモダリティ※2・苦手なモダリティを把握し、その後の訓練へ活かしていきます。
※2 話すこと、聴くこと、書くこと、読むことの4つの側面を(言語)モダリティと呼びます。

訓練

訓練では、SLTAで評価した内容を基に訓練プログラムを立案していきます。
具体的には、患者さんの残存する言語機能と得意とするモダリティを活かして、苦手な部分にアプローチをしていきます。例えば、言葉が出にくい患者に対して絵カードを見せながら、一緒に物の名前を言ってもらいます。その他にも、ヒントとして単語の一文字目を提示して、患者さん一人で物の名前を言えるように誘導します。

下の写真は訓練で実際に使用する絵カードです。この絵カードを見せて、物の名前を言ってもらいます。


▲絵カード:(株)エスコアール「ActCard」第1巻

単語の一文字目をヒントとして提示しても名前が出てこない場合は、物の名前を文字(ひらがな・漢字)で見せて、名前を言ってもらいます。

このように、患者さんに合わせたプログラムを行い、言語機能の改善を目指します。
しかしながら、失語症とは生涯お付き合いしていかなくてはならないので、長期的なリハビリやサポートが必要です。言語聴覚士は、失語症の患者さんに対して上記のようなリハビリを行いつつ、お住まいの地域にいらっしゃる失語症患者さん同士の交流の場(失語症友の会)への参加を促して、コミュニケーション機会の提供やサポートをしております。

以上、失語症についてのお話でした。

2021年9月30日脳卒中後の“失語症”に対するアプローチ

みなさん“失語症”って知っていますか?
脳卒中で起こり得る症状のひとつが失語症です。脳卒中ではその他にも高次脳機能障害、構音障害、嚥下障害なども生じます。
私たち言語聴覚士Speech Language Hearing Therapist(ST)は、これらの言語や嚥下障害に対するリハビリを行っています。

そこで今回は言語に関する症状が現れる“失語症”についてお話します。

失語症とは、脳内の言語領域(言語の機能を司る部分)の病変により、いったん獲得された言語機能が障害された状態を指します。
これは認知症による全般的な知能低下や、高次脳機能障害、口腔の麻痺により生じた言語障害とは区別されます。

失語症では話す、聴く、書く、読むの全ての言語モダリティ※1が障害されます。

つまり、脳卒中を起こす前まで何気なく行っていた会話の内容が理解できなくなったり、新聞を読んだりお手紙を書いたりすることが難しくなってしまう障害なのです。
しかし、すべてのモダリティが完全に障害されるわけではなく、脳卒中の程度によって症状に差が生じます。

※1 失語症では話すこと、聴くこと、書くこと、読むことの4つの側面を言語モダリティ(種類)と呼びます。

自分や家族が突然そのようなことになってしまったら、どうやってコミュニケーションをとっていきますか?
STのリハビリでは、患者さんに残存する言語機能と得意とするモダリティを活かしたコミュニケーション方法を考え、その手段を練習します。
そのために、まずは失語症に対する評価から始めていきます。

脳卒中の治療を開始した直後は、まずはベッドサイドから簡単な言語検査を行います。
評価内容としては、質問に対する理解や応答を<聴く・話す・読む・書く>のすべてのモダリティで評価していきます。
各評価内容とその例を、簡単に示します。

<聴く> <話す>
➀聴いたことができるかどうか
例)患者さんに「右手を挙げてください」と言う
②聴いた物を指さしてもらう
例)患者さんに「窓を指さしてください」と言う
➀身辺情報を口頭で答えてもらう
例)名前、年齢、生年月日など
②物の名前を言ってもらう
例)コップを見せて「これは何ですか?」と質問する
<読む> <書く>
➀文字を声に出して読んでもらう
例)『りんご』の文字を見せて読んでもらう
②書いてあることができるかどうか
例)『右手を挙げてください』の文章を見せる
➀身辺情報を文字で書いてもらう
例)名前、年齢、生年月日など
②物の名前を書いてもらう
例)枕を見せて「これは何ですか? 文字で書いてください」と言う
<聴く> ➀聴いたことができるかどうか
例)患者さんに「右手を挙げてください」と言う
②聴いた物を指さしてもらう
例)患者さんに「窓を指さしてください」と言う
<話す> ➀身辺情報を口頭で答えてもらう
例)名前、年齢、生年月日など
②物の名前を言ってもらう
例)コップを見せて「これは何ですか?」と質問する
<読む> ➀文字を声に出して読んでもらう
例)『りんご』の文字を見せて読んでもらう
②書いてあることができるかどうか
例)『右手を挙げてください』の文章を見せる
<書く> ➀身辺情報を文字で書いてもらう
例)名前、年齢、生年月日など
②物の名前を書いてもらう
例)枕を見せて「これは何ですか? 文字で書いてください」と言う

この結果をもとに症状の度合いを想定していき、さらに細かく精査を行っていきます。

紙面の関係で精査と訓練については次回お伝えさせていただきます。
以上、STチームからでした。

2021年8月31日膝の手術のリハビリテーション ―高位脛骨骨切り術編―

みなさん、こんにちは! 整形チームです。
先月に引き続き、「変形性膝関節症」についてお話します。

変形性膝関節症の症状や人工関節置換術・手術後のリハビリテーションについては、先月のブログをご覧ください。

今月は、変形性膝関節症に対する「高位脛骨骨切り術」の手術後のリハビリテーションを紹介します。

【高位脛骨骨切り術 HTO:high tibial osteotomyとは】

高位脛骨骨切り術には以下の通り、大きく2種類あります。

楔状開大型骨切り術(OWHTO:open wedge high tibial osteotomy)
→脛骨の内側から外側に向かって骨を楔状に切り、内側を開いて人工骨を挿入して矯正する方法(下の写真)。

楔状閉鎖型骨切り術(CWHTO:closed wedge high tibial osteotomy)
→脛骨の外側から骨を楔状に切り短縮させて矯正する方法

特徴

自分の関節を温存できることがメリットです。
正座が可能となったり、スポーツや農業への復帰が可能となったりする場合が多くあります。

適応

比較的年齢が若く、膝関節の変性がまだ関節全体に及んでいない場合には、関節を矯正するとともに変性が及んでいない関節面に荷重を移動させることができる高位脛骨骨切り術を行います。

【高位脛骨骨切り術後のリハビリテーション】

手術前日

膝や歩行の評価、生活環境や退院後に必要な動作などの確認を行います(評価が手術当日になる場合もあります)。

手術翌日以降

リハビリは手術の翌日から1日20分~40分程度の予定で行います。膝の痛みや腫れの具合に応じてコンディションを整え、時間や運動量に配慮しながら進めますのでご安心ください。まず、手術後はこのような状態です(図3)。

図3.膝の安静を保つため、関節可動域練習時以外は“ニーブレース”と呼ばれる膝の装具をつけた状態で過ごします。
装具の下(創の周囲)は包帯で保護されています。

・関節可動域練習【膝を曲げる/伸ばす練習】
手術翌日から、痛みに応じて膝の曲げ伸ばしの練習が可能です。
*CWHTOの場合は手術後1週から開始します。

・筋力強化
手術翌日から、膝関節周囲の筋力をつけるため、また、その他部位の筋力低下を防ぐ目的で簡単にできるものから開始します。

・歩行練習
手術をした足に全体重をかけるまで以下の流れで進めていきます。

手術直後~1週間 手術をした足には体重がかけられません。
移動する時はニーブレースという装具をつけて、膝を伸ばした状態を保ちます(手術後5週頃に装具を外せます)。
可能な場合は2本の松葉杖で足を浮かせて歩きますが、難しい場合は車いす移動になります。
手術後1週~ 手術した足に体重の1/3まで体重をかけられます。
体重計に乗って、体重の1/3の感覚をつかむ練習をします。
体重をかける量がコントロールできるようになったら、2本の松葉杖で院内の移動が可能になります(以下の動画参照)。

手術後2週~ 手術した足に体重の半分まで体重をかけられます。
1/3の時と同様に体重計で荷重量のコントロール練習をします。
松葉杖はまだ2本必要です。
手術後3週~ 手術した足に全体重をかけられます。
全体重がかけられる=杖なしでも歩ける
ということになりますが、歩いた時の痛みの具合、手術をした足をかばって他の部位に痛みが出そうな歩き方をしていないかなどを確認して、松葉杖1本または杖での歩行練習から始めます。

*CWHTOの場合は体重をかける時期が遅くなります(手術後2週~体重の1/3、手術後4週~体重の1/2、手術後6週~全体重)。

・階段練習
全体重をかける歩行を開始してから始めます。

また、リハビリテーションの時間以外の自主トレーニングも大切です。トレーニング内容は患者さんごとに必要なものをお伝えしています。

退院の時期

手術から3週間程度での退院を目指します(全体重がかけられるようになる時期)。退院時は、杖歩行~杖なしでの歩行が可能となるレベルまでアップしていきます。

退院後

外来診察に合わせて外来リハビリテーションも実施しています。

2ヵ月にわたり、変形性膝関節症に対する手術療法とリハビリテーションについて紹介してきましたが、いかがでしたか? 今後の参考にしていただければと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。

2021年7月31日膝の手術のリハビリテーション ―人工関節置換術編―

みなさん、こんにちは! 整形チームです。
今回はよく耳にする「変形性膝関節症」についてお話していきます。

変形性膝関節症とは・・・?

病態

加齢、肥満、筋力低下などの影響で、関節のクッションの役割をする膝の軟骨がすり減り、膝関節に痛みが生じたり、水がたまったりする疾患です。
加齢とともに罹患率は高くなり、男女の比率は1:4で女性に多い疾患です。
図1、図2は正面から見た “正常な左膝”と“変形性膝関節症の左膝”のレントゲン写真です。

正常な膝では、大腿骨(だいたいこつ:太ももの骨)と脛骨(けいこつ:すねの骨)にすき間があります(部分)。しかし、変形性膝関節症ではこのすき間にある軟骨がすり減り、すき間が狭くなります(特に内側)。

原因

以下のように分類され、一次性が大部分を占めています。
一次性:加齢による退行性の変化(軟骨が加齢により弾性力を失い、使い過ぎによりすり減ること)や、肥満や遺伝子によるもの。
二次性:骨折や半月板損傷などの外傷や化膿性関節炎などの感染後の後遺症などによるもの。

症状

初期:立ち上がりや歩きはじめなど動作開始時の痛みを生じる。
中期:痛みや関節の動きの制限から、正座や階段昇降が困難となってくる。
末期:何もしなくても痛みが取れず、関節の変形が目立ち、膝が伸びにくくなったり、歩くことが辛くなったりしてくる。

日々の生活で例えるなら、トイレまで移動する(歩く)、便座に座る/立つ、部屋に戻る・・という感じで、一日何回も立ち座りや歩くことが必要となります。痛みが強くなり、立ち座りの動作や歩行が思うようにできなくなると、外出の機会も減り、QOL(=Quality Of Life:生活の質)が低下してきます。

治療

当院では、近隣の医療機関より変形性膝関節症の手術を目的として整形外科の膝関節センターを紹介受診される方が多く、手術・手術後のリハビリテーションを行っています。
変形性膝関節症に対しての手術は、「人工関節置換術」または「高位脛骨骨切り術」が選択されます。

そこで、今月と来月で変形性膝関節症に対する「手術療法」と「手術後のリハビリテーション」を2本立てで紹介していきます。
今月は「人工関節置換術」と「手術後のリハビリテーション」を、
来月は「高位脛骨骨切り術」と「手術後のリハビリテーション」を紹介します。

【人工関節置換術】
人工関節置換術には、膝関節の全てを置き換える“人工膝関節全置換術(Total Knee Arthroplasty: TKA 図3)”と
膝関節の一部を置き換える(主に内側)“人工膝関節単顆置換術(Unicompartmental Knee Arthroplasty: UKA 図4)”があります。

特徴
人工関節の耐久性は20~30年以上です。
手術後は歩行時や階段動作での痛みが軽減しQOLが上がります。

適応
痛みによる歩行障害が強く日常生活が困難となった状態で、レントゲンなどによる画像評価で変形性変化が強い場合に人工関節置換術の適応となります。
年齢的には、70歳以上の方が多いです。

【リハビリテーション】

TKA、UKAともにリハビリの進め方は同じです。

手術前日

膝や歩行の評価、生活環境や退院後に必要な動作などの確認を行います(評価が手術当日になる場合もあります)。

手術翌日以降

リハビリは手術の翌日から1日20分~40分程度の予定で行います。手術後の膝の動きを良くするためにも、手術した部位以外の筋力低下を引き起こさないためにも、翌日から体を起こしてリハビリを行う必要があります。
・・・ですが、膝の痛みや腫れの具合に応じてコンディションを整え、時間や運動量に配慮しながら進めますのでご安心ください(手術の状況や経過によりリハビリの進め方が変わることもあります)。

・関節可動域練習【膝を曲げる/伸ばす練習】
手術後3日間くらいは膝全体が包帯で、その後は創の部分を絆創膏のようなテープで保護されており、術後すぐの曲げ伸ばしの運動が可能です。

・筋力強化
膝関節周囲の筋力をつけるため、また、その他の部位の筋力低下を防ぐ目的で早期から開始します。

・歩行練習
まずは平行棒や歩行器を使い、慣れてきたら杖歩行や杖なしでの歩行へ進めます。手術直後は歩く時に痛みや緊張から膝が伸びた状態(足が棒になってしまう状態)になることが多いです。手術した足に体重を乗せる練習や、手術した膝がなめらかに動くような練習を行い、安定した歩行獲得を目指します。

▲歩行器訓練の様子。

・階段練習
歩行が安定したら行います。

また、リハビリテーションの時間以外の自主トレーニングも大切です。トレーニング内容は患者さんごとに必要なものをお伝えしています。

退院の時期

手術から2~3週間での退院を目指します。
退院時は、杖歩行~杖なしでの歩行が可能となるレベルまでアップしていきます(手術前の歩行状況により、歩行器歩行がゴールとなる場合もあります)。

退院後

外来診察に合わせて外来リハビリテーションも実施しています。

今月はここまで。
来月は、「高位脛骨骨切り術」と「手術後のリハビリテーション」を紹介します。

2021年6月29日2型糖尿病と運動療法について

こんにちは。内科・外科チームです。
今回は2型糖尿病に対する運動療法についてご紹介します。

2型糖尿病は完全に治すことが難しい病気で、食事療法と薬物療法、そして運動療法を基本的な治療の柱として、血糖値を正常に近づけ維持していくことが重要となります。

運動というと「時間がない」「お金がかかる」「運動が嫌い」といったマイナスイメージにより日常生活に取り入れることが難しい面があります。一方で、メリットとしては「体の動きが良くなる」「体力低下を防ぐ」「血糖値が改善する」といった面もあります。運動療法の有効性と危険性を正しく理解し、無理なく、長期的に続けることで、病気が改善する可能性があります。

では、なぜ2型糖尿病に運動療法が効くのでしょうか?

[効果]

運動療法の効果には次のようなものがあります。

  • 骨格筋が血中のブドウ糖を利用することで血糖値が低下する(図1)

    ▲図1 糖が筋肉に取り込まれる仕組み
  • ブドウ糖を肝臓や脂肪組織、骨格筋に取り込みやすくするホルモン「インスリン」が効きやすくなる
  • エネルギー摂取量と消費量のバランスが改善され減量効果がある
  • 加齢や運動不足による筋萎縮や骨粗鬆症の予防に有効
  • 高血圧や脂質異常症の改善に有効

このように運動療法には2型糖尿病の改善に関するものだけでなく、身体機能全体を改善する効果があることがわかります。
では、どういった運動を行えばよいのでしょうか?

[方法]

運動の種類は「有酸素運動」と「レジスタンス運動(=筋力トレーニング)」に分けられます。有酸素運動の代表的なものは歩行やサイクリングです。
レジスタンス運動は抵抗を加えながら筋肉を動かすことで筋力を強化する運動で、代表的なものはスクワットや踵上げです。
膝痛がある方など筋肉に負荷をかけることが難しい場合は水中での歩行も有効です。

[強度]

運動を行う中で「やや楽である、話しながら続けられる」~「ややきつい、話し続けにくい」と感じる程度が良いと言われています。
また、歩数計を装着して、家事などの生活活動と歩行などの運動を合わせて目標歩数を8,000~10,000歩/日に設定するのも有効です。

[頻度]

血糖値の降下作用は運動時だけではなく、およそ24~48時間程度持続すると言われています。
可能であれば週に3日~毎日運動を行うことがすすめられます。
運動を中止すると2~3日で効果が低下してしまうと言われています。

[時間]

一日20~60分を目安とします。

[タイミング]

食事摂取から約60分経過後の、血糖値やインスリン濃度がピークに達した時間帯に運動を行うと食後高血糖の改善が期待されます。
家事などゆっくりした生活活動でも食後に行うことで改善効果があります。

[注意点]
  • インスリン治療中や血糖降下作用のある薬を使用している場合は、空腹時に身体活動を高めると低血糖発作を起こす可能性があるため、空腹時の運動は避けましょう。
  • 運動時の低血糖発作(冷汗、動悸、手指振戦、顔面蒼白、頭痛、眠気、生あくびなど)に備え、ブドウ糖や砂糖を常時携帯しましょう。
  • 糖尿病3大合併症(腎症、網膜症、神経障害)や心血管系疾患、骨関節系疾患といったリスクがある場合は、運動がすすめられない場合があります。その場合は、主治医へ相談してから行うようにしてください。
  • 運動前、運動中の水分補給をこまめに行いましょう。脱水症状では血液が濃縮して固まりやすくなり、心筋梗塞や脳梗塞を誘発する可能性があります。

2型糖尿病に対する運動療法について説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。
当院では、糖尿病治療・教育入院をされた方に対し、エルゴメーターでの有酸素運動を中心に運動療法を行っています。
運動療法は継続すればするほど効果が上がります。病気を改善し健やかな毎日を過ごすために運動を日常の中に取り入れてみてはいかがでしょうか。

2021年5月31日循環器疾患のリハビリって、どんなことをするの?

こんにちは! 心臓リハビリチームです!

循環器疾患(※1)の患者さんのリハビリを担当していると、心臓が弱いのに運動をして大丈夫なの? どんなリハビリをするの?と質問を受けることが多くあります。

骨折をしたので松葉杖の練習をする、脳卒中で手足の麻痺があるから動かすリハビリをするということは想像しやすいと思いますが、心臓リハビリとは具体的に何をするのでしょうか。今回は心臓リハビリの中でも特に、運動療法の意味と効果についてご紹介させて頂ければと思います。

※1 当院では心筋梗塞や狭心症、心不全、弁膜症、大動脈解離、下肢閉塞動脈硬化症などの治療のために、循環器内科・心臓血管外科で入院中の患者さんのリハビリを行っています。

心臓が弱いのに運動をしても良いの?

自己判断で運動や重労働をすることは危険です。しかし、逆に安静にしすぎるのも良くありません。
医療従事者がいる環境で、血圧や心電図を確認しながら適切な強度の運動をすれば、危険な心臓発作や状態悪化が生じるリスクを減らせます。また、退院後もご自身で運動を継続できるようにご自分にあった運動の負荷量を知ることも大切です。

心臓リハビリは研究されてきた歴史があります

1930年代 心筋梗塞発症後、2ヵ月間はベッド上安静が基本、運動は禁忌
1960年代~1970年代 長期臥床による弊害を確認、発症早期から離床、適度な運動が推奨された
1980年代~1990年代 運動療法に加え患者教育を併用し、長期予後・QOL(※2)が改善
2000年代 運動療法により心不全患者の予後改善効果を証明
つまり、心疾患の患者さんは治療の一環として運動をした方が良い経過が得られるという事が分かってきました。

※2 QOL(Quality of Life):人生の質、生活の質

心臓のリハビリとは?

心臓リハビリ=運動、ではありません。
心臓リハビリには、運動療法に加え、食事療法+服薬指導+禁煙指導+患者教育+復職指導+心理相談等が含まれます。病気の再発や再入院を防ぐことを目指して行う包括的なプログラムです。
そのため、理学療法士だけでなく、医師や看護師・栄養士・薬剤師・医療ソーシャルワーカーなど他の職種と情報を共有し、治療と療養サポートを行っています。

運動をするとこんなにいいことがあります

身体機能面では、持久力(運動耐容能の改善)、狭心症症状・心不全症状の軽減
心理的側面では、不安・抑うつ・QOLの改善
予後の面では、心血管死亡・総死亡率の低下、心事故(再入院・再血行再建)の抑制
が挙げられます。

当院での進め方

循環器疾患でご入院された全ての方が対象で、症状が落ち着き、主治医指示のもと早期からリハビリ介入しています。手術後の方も、手術翌日から早期離床や廃用症候群(※3)予防の目的でリハビリを実施しています。手術後は、点滴やドレーンといわれる管類がたくさんついていますが、安全に離床できるよう支援しています。
予定手術の方であれば手術前から開始し、手術前の身体機能を評価したり、手術後のリハビリの流れを説明したりしています。

※3 廃用症候群:長期間の臥床・安静を継続したことで、身体能力の大幅な低下や精神状態に悪影響をもたらす状態のこと。

≪手術直後のリハビリ≫


写真左:寝ている姿勢で手や足を動かします。右:立ち上がり動作の練習や立位練習をします。
痛みや血圧・脈拍・心電図等の変化がないか確認しながら、少しずつ体を動かしていきます。

退院に向けて、レジスタンストレーニングや歩行練習も行っていきます。
レジスタンストレーニング(=筋力トレーニング)や、歩行練習をしている間に血圧や脈拍の他に心電図をモニタリングし、心負荷や不整脈のチェックをしながら運動負荷量を調整しています。

≪レジスタンストレーニングや歩行練習風景≫

当院では退院後もリハビリを継続して行えるように、退院前に運動指導を行ったり、外来リハビリ(※4)も行っています。
医療従事者の指導の下で安全な運動療法・心臓リハビリを続けて頂き、体力の回復、心疾患の再発・再入院の予防ができるよう支援しています。

※4 外来リハビリは当院に入院されていた方を対象としております。また外来リハビリ開始には主治医からの指示が必要ですので、担当の医師や理学療法士へご相談ください。

2021年4月28日当院での手根管症候群へのハンドセラピィ

みなさん、こんにちは。リハビリテーション室の作業療法チームです。
当院には、手外科センターがあり、様々な手外科疾患の患者さんへ治療を行っています。
私たち作業療法士も手外科専門医と連携し、手外科疾患の患者さんに対するリハビリテーション(ハンドセラピィ)を提供しています。
今回は当院でも症例数が多い手根管症候群について、当院でのハンドセラピィを踏まえてご紹介いたします。

手根管症候群とは

「手根管」というトンネルの中で正中神経が圧迫されて、手のしびれや疼痛、運動障害を生じる病気です。末梢神経障害の中で最も多く、40~60代の女性に多く発生します。ホルモンバランスの崩れ、手の過負荷、骨折、腫瘍、などなど、様々なことが原因となりますが、特に原因なく発症する場合もあります。

症状

親指~中指にかけてしびれが出現します。薬指の半分もしびれます。夜間や明け方にしびれが強かったり、痛みを生じたりすることも特徴的です。症状が進行すると、「母指球筋」という親指の付け根にある筋肉が萎縮して、ボタンをしめたり、小銭をつまんだりするなどの細かい作業が困難になります。


▲正常なOKマーク(写真左)と手根管症候群のOKマーク(写真右)
手根管症候群の方のつまみ動作は、きれいなOKマークにはならず、いびつな形になります。

~ここで簡単にできるテストをご紹介します~

・手の甲と甲を合わせます
・この姿勢で30~60秒キープしてください
・しびれが増悪する場合は手根管症候群の可能性があります

治療 および リハビリテーション

保存療法

手にかかる負荷を減らしたり、薬を内服したり、ブロック注射をしたりします。生活指導も重要です。手や手首を繰り返し曲げ伸ばしするような動作を避けたり、しびれが出現した時は適宜休憩したりするなど、患者さんの生活背景に合わせた指導を行っています。

装具療法も有効です。当院では患者様にあった装具をオーダーメイドで作業療法士が作成しています。症状が軽い場合は、無意識に手首が曲がってしまう可能性のある夜間のみ装着します。日中もしびれなどある場合は可能な限り装着するようにお伝えしています。

手術療法

保存療法をおこなっても症状が改善しない場合や、すでに母指球筋の筋萎縮がある場合は手術療法が選択されます。
手術には大きく分けて、手根管開放術と母指対立再建術があります。

手根管開放術
「屈筋支帯」という、手根管の屋根に相当する組織を切開して、正中神経にかかる圧力を減らしてあげる手術です。皮膚を3~4cm切開する方法と内視鏡を用いる方法とがあります。手術直後から手指をよく動かすようにします。

母指対立再建術
つまみ動作が困難な方に対して、手根管開放術に加えて母指対立再建術を行うことがあります。この手術をおこなった後はギプス固定が必要です。患部が安定しギプス固定が外れたら本格的なリハビリとなります。始めは軽い負荷でつまみ練習を行っていき、状態に合わせて負荷量を調整していきます。順調であれば、術後3ヵ月程で力仕事も許可されます。ここでは、ふたつの「つまみ練習」をご紹介します。

▲スティックを用いて人差し指と親指の指先を意識してつまむ練習

▲粘土に似た素材を使用し強い力でつまむ練習

※リハビリには医師の診察が必要です。

荻窪病院リハビリテーション室が認定ハンドセラピスト養成施設になりました

昨年8月より、当院は日本ハンドセラピィ学会認定の臨床研修施設に認定されました。
認定ハンドセラピストになるためには、学会主催の研修会参加や手外科分野での学会発表、認定施設での一定期間の臨床研修・経験症例数を要し、その上で認定試験に合格する必要があります。当院は、手外科センターの専門外来があり、医師からの指示の下、今まで以上に手外科に特化した、より質の高いリハビリテーションを提供できるよう努めて参ります。

2021年3月25日訪問リハビリテーション室、開設しました

こんにちは。リハビリテーション室です。

当院では2021年1月に 訪問リハビリテーション室を開設いたしました!!

コロナウイルスの影響が長引き、外出自粛などにより“フレイル”(くわしくは過去のブログをご参照ください)に陥っていないでしょうか?

特に介護保険を使用してリハビリやデイケアに通っていらっしゃる方は、
「定期的に通わないと体力が落ちちゃう」
「でも、密になるのが心配」
といったジレンマを抱えている方もいらっしゃると思います。

そこで、ご自宅でリハビリが可能な「訪問リハビリテーション」について、ご紹介させていただきます。

「訪問リハビリテーション」とは、介護保険を使って、ご自宅にセラピストが訪問しリハビリテーションを行うサービスになります。

対象となる方
  • 介護保険加入者(要支援、要介護) または 申請中の方
  • 当院より半径2km圏内(※1)にお住まいの方
主な内容
  • 身体機能(筋力、関節可動域、バランス能力 など)の維持・向上
  • 歩行練習
  • 自宅内の日常生活動作の練習
  • 福祉用具の相談、選定

などです。

依頼までのながれ

ご興味がある方はまず担当のケアマネジャーにご相談ください(利用者様から直接ご依頼をいただくことはできませんので、ご注意願います)。

フレイル予防に訪問リハビリテーション室をご活用いただければ幸いです。
以上、リハビリテーション室でした。

※1 (訪問範囲に関してはご相談ください)
≪杉並区≫
天沼、井草、今川、上井草、上荻、清水、下井草、松庵、善福寺、西荻北、西荻南、本天沼、南荻窪、桃井
≪練馬区≫
上石神井1.2丁目、上石神井南町、下石神井1.2.4.5丁目、関町南1.2丁目

2021年2月22日なんと! これがリハビリに?

こんにちは。リハビリテーション室の助手です。
上の写真を見て、皆さんは何を想像しますか?
実は、これら全てリハビリで使用している道具なんです。
身近にある遊び道具が、運動機能の改善や、脳を活性化することにつながるなんて、ちょっと驚きですよね。

今回は、写真の道具をどんなリハビリに使用しているか、助手の視点から簡単にご紹介します。

キラキラな曲者ビー玉~足指で挟んで足の感覚&筋力向上~

足の筋肉の柔軟性や筋力がないと、バランスを崩しやすくなったり、転びやすくなり、他の関節への負担が増え、足の関節はもちろん他の関節を痛めたり、変形を起こすなど様々な影響を及ぼします。
ビー玉を足の指や腹で挟む動作をすることで、足の筋力や感覚の向上が期待できます。

そんな曲者を使用しているのは、
運動のスペシャリスト! 理学療法士(PT:Physical Therapist)

病気やケガ、障害や加齢による運動能力低下に対してリハビリを行います。
起きる、立つ、歩くなど身体を動かすための基本的な動作の練習や、温熱療法や電気による治療などの物理的手段で運動機能の維持・改善を図るよう指導します。

縁日の主役 輪投げ~的を狙って頭と体を活性化しましょう~

座位や立位を保ちながら、前にあるポールに手を伸ばして輪を入れる動作は、遠くへ手を伸ばすリーチ動作、座位や立位バランス、手指の把持機能の改善につながります。
また、高齢の方に子どもの頃にやった遊びをしてもらうことは過去の記憶を呼び起こすことにつながり、脳が活性化して認知症などの予防効果も期待することができます。

そんな主役を支えているのは、
巧緻運動のスペシャリスト! 作業療法士(OT:Occupational Therapist)

日常生活動作能力、応用動作能力、社会的適応能力の回復や改善を目的に、日常生活の作業を通してリハビリを行います。
食事や家事、入浴や着替え等、日常生活においての手指を使った細かな巧緻(こうち)動作がリハビリになるため、病気やケガによる障害や不自由を抱えた人が、その人らしく自立して生活できるように、生活環境を踏まえながら指導していきます。
身体機能だけでなく精神面のケア、脳血管障害の方もサポートする職種です。

隠れた実力者 吹き戻し(巻き笛)~ピロピロ吹いて自分の力を伸ばしましょう~

加齢とともに低下する呼吸力、嚥下力。嚥下機能の低下は誤嚥性肺炎を発症しやすくなり、命の危険を伴います。
吹き戻しを吹くことで、口腔器官の状態を測定できたり、腹式呼吸や口元の筋肉をつける訓練にもなります。高齢の方でも、楽しみながら簡単に行うことができます。

そんな隠れた実力者を自在に操る、
言葉と嚥下のスペシャリスト! 言語聴覚士(ST:Speech Therapist)

生きていくうえで必要不可欠である話すことや聞くこと、食べることに障害のある患者さんの機能の維持・向上を図るためリハビリを行います。
失語症、脳梗塞などでうまく言葉がつかえない方の気持ちを汲み取り、文字や絵を使っての訓練、発声や音読練習を行ったり、食事がうまく取れない方に対し、飲み込み訓練、姿勢・食事形態などの指導をしたりします。

リハビリというと、骨折した人や事故にあった人が、専門的な器械を使って行うものという印象が強いと思いますが、職種によって対象としている患者さんが様々であり、遊びのように思えることも、リハビリの効果が期待できるものがたくさんあります。

道具に限らず、普段何気なくやっていることが、自分自身の身体機能の低下を防ぐことにつながっていることもあります。
リハビリってなんだか敷居が高い、自分とは縁がないものと思っている方に、「リハビリって奥が深い!」「こんな動作がリハビリにつながるんだ!」と、少しでも興味を持ってもらえたら幸いです。

※リハビリは、医師の指示の下、それぞれの患者さんの疾患、状態に合わせた訓練を行っております。
今回紹介している道具でのリハビリは、あくまでも訓練の1つであり、これが全てではありませんので、ご理解の程お願いします。

2021年1月29日嚥下機能の低下が招く誤嚥性肺炎~誤嚥性肺炎を予防しよう~

こんにちは! 言語聴覚士(ST:Speech Therapist)チームです!
当院では摂食嚥下(せっしょくえんげ)リハビリテーションを中心としたリハビリを実施しています。
内容としては、病気や加齢により嚥下機能(食べ物や飲み物を飲み込む機能)が低下している患者さんに対して、再び安全に食事をとれるように食事の形態、姿勢、介助方法などの検討をしています。
今回はSTの関わる疾患で特に多い誤嚥性肺炎の予防についてお話ししたいと思います。

◆誤嚥性肺炎について

誤嚥性肺炎とは、細菌が唾液や食べ物などと一緒に気管支や肺に入って発症する肺炎です。通常、唾液や食べ物は口腔から食道を通り胃へ送り込まれます。しかし嚥下機能が低下すると、唾液や食べ物が誤って気管に入ってしまいます。その際に、口腔内の細菌が気管に入り込むことで誤嚥性肺炎を発症します。特に脳梗塞などの脳血管疾患や加齢により嚥下機能が低下した方は、誤嚥性肺炎を引き起こしやすいです。

◆嚥下機能は大丈夫?

それでは、嚥下機能低下の徴候があるかを確認してみましょう。
当院に入院される誤嚥性肺炎の患者さんに、よく見受けられる嚥下機能低下の症状をまとめてみました。
10項目のうち1項目でも当てはまる方は、嚥下機能が低下している可能性があります。

  1. 最近食欲がない、やせてきた
  2. ものが飲みにくいと感じることがある
  3. 食事中にむせることがある
  4. 食事中・食後にのどがゴロゴロすることがある
  5. のどに食べ物が残る感じがする
  6. 食べるのが遅くなった
  7. 口の中に食べ物が残ることがある
  8. 胸に食べ物が残ったり、詰まったりする感じがある
  9. 夜、咳で寝られない、目覚めることがある
  10. 声がかすれてきた

1項目でも当てはまるものはありましたか?
特に赤字の項目に当てはまる方は、嚥下機能の低下から誤嚥性肺炎を引き起こす可能性があるため注意が必要です。
嚥下機能の低下を予防するために、自主的に取り組めるトレーニングをご紹介します(図1)。

図1 食べる前の準備運動

頭部から頸部の筋肉の柔軟性、口腔内(頬、口周り、舌)の筋力を維持することが嚥下機能低下予防につながります。

継続する事で嚥下機能の低下を防いでいきましょう。
ぜひお試しください。

◆介護が必要な人の予防策

介護が必要な人には、口腔ケアが誤嚥性肺炎の予防策として大きな役割を果たしています。
うがいが可能な場合には、洗口液でうがいを行い食前から口腔内の衛生状態をよくしましょう。
できない場合には介護者が定期的に時間を決めて口腔内の汚染がないか確認し、必要であればガーゼ・スポンジブラシ等の口腔ケア用品を用いて汚染を取るなどのケアの方法が効果的です(図2.3)。
また、可能であれば定期的にかかりつけの歯科医へ歯科往診を依頼するのも口腔衛生を保つためには有効です。

図2 口腔ケアで使用する用品

図3 うがいが困難な場合の口腔ケア方法

口腔内の衛生が保たれることによって虫歯、歯周病、誤嚥性肺炎の予防だけでなく、認知症のリスク低減につながることが最近の研究で言われています。
きれいな口でおいしく食事をすることで誤嚥性肺炎にならない体づくりをしていきましょう。

2020年12月25日冬場の運動の注意点~心疾患をお持ちの方へ~

こんにちは。心臓リハビリテーションチームです。
寒い日が増えてきましたね。皆さま、体調を崩さずにお過ごしでしょうか。

心臓病患者さんは、退院後もウォーキング等の適度な運動を継続することで、体力の回復、精神的負担の軽減、心臓病の再発予防につながり、生活の質の改善が期待できるとされています。そのため普段から運動を心がけている方も多いと思いますが、寒い時期に運動する際にはいくつかの注意点があります。

今回は、当院が心臓病患者さんにお伝えしている、これからの寒い時期にも安全に運動を継続していただくためのポイントをご紹介したいと思います。

【冬場の注意点について】
  • 暖かい室内から気温の低い屋外に出る時等、急な気温の変化が血管を収縮させ、血圧を上昇させたり狭心症*1の発作を引き起こす可能性があります。
  • 心不全*2をお持ちの方は、血圧の上昇や、風邪をひいたりすることが症状の増悪につながる事があります。
  • 寒さの厳しい時や天候が不良な時には無理に屋外で運動せずに、屋内でできる運動を取り入れましょう。また、屋外で運動する際には手袋、帽子、マフラー等の防寒着を着用しましょう。

*1 狭心症:心臓を栄養している冠動脈が狭くなり、冠動脈を流れる血流量が減ってしまうことで心臓の筋肉に酸素や栄養が行きわたらなくなり、胸がしめつけられるような苦しさを引き起こします。
*2 心不全:何らかの原因によって心臓のポンプ機能が低下してしまい、全身に血液を十分に送り出せなくなります。そのため、諸臓器に異常が起こり、浮腫み、息切れ、呼吸困難、だるさ、食欲低下等の症状を来してしまう病態です。

【冬に運動を行う時の注意点】
  1. 運動の時間
    血圧には日内変動があり、昼間活動時に上昇し夜間睡眠時に低下します。起床時は自律神経の変化のため血圧が不安定になり、起床とともに血圧が上昇しやすくなります。
    起床後すぐの運動は避け、出勤や散歩までは1時間程度ゆとりをとり行動するとよいでしょう。
    また、屋外で運動する際は、昼間の暖かい時間に行い、寒さの厳しい時間帯は避けるようにしましょう。
  2. 運動の様式
    ウォーキングやスイミング等の有酸素運動は、運動中の血圧変動が少なく、安全で効果的です。逆に重量物を持ち上げたりする力む運動や瞬発的に走る運動は、急な血圧や脈拍の上昇を来しやすく心臓への負担が強いので注意しましょう。
  3. ウォーミングアップ(準備運動)をする
    ウォーミングアップをして徐々に負荷をかけていくことで、血圧や脈拍の変化が緩徐となり、心臓への負担が軽減します。また、体温が上昇することで、筋肉や関節も動かしやすくなります。
  4. 水分補給
    汗をかいたり、脱水になると血液が濃くなり、血栓ができやすくなります(血圧や血流の変動で心筋梗塞、脳梗塞等の脳疾患を引き起こさないようにしましょう)。
    寒い時やたくさん汗をかかない時でも十分な水分補給をするようにしましょう。
  5. 感染対策
    心不全をお持ちの方は風邪等を契機に心不全が悪化することがあります。日頃からマスク・うがい・手洗いなどの感染対策に努めましょう。

これから一層寒くなる時期ですが、体調管理をしながらぜひ運動を継続していきましょう。

心臓病で当院へ入院されていた方へ

当院では、心筋梗塞、心不全、心臓手術等で入院加療をされていた方に外来通院での心臓リハビリテーション(以下心リハ)実施しています。
退院後、どの程度運動すればよいのか、どのように生活したらよいのか不安に感じる方もいると思います。
外来通院での心リハでは運動指導に合わせ、食事・生活のアドバイスも行っております。
リハビリ開始には主治医からの指示が必要ですので、まずは通院時に主治医にご相談ください。

▲ 外来心リハで使用している健康管理手帳

▲ 当院の心リハスペースの様子

以上、「冬場の運動の注意点~心疾患をお持ちの方へ~」でした。
ありがとうございました。

2020年11月30日外出自粛で陥りやすい?「フレイル」を防ぐ

こんにちは。
今年は新型コロナウイルスの影響で、家で過ごす時間が長くなっているのではないでしょうか?
感染を避けるために外出自粛は有効な手段ですが、どうしても活動量が減ってしまい、体力や筋力が落ちてしまっている方もいらっしゃると思います。
そこで今回はフレイルについてお話させていただきたいと思います。

フレイルとは英語の “frailty”=“虚弱” を表す言葉から来ています。

その特徴として、次の3つが挙げられます。

①健常と要介護の中間の状態であること
脳梗塞や怪我で急に要介護状態になることもありますが、多くの高齢者は健康な状態から徐々に要介護にいたるとされます。

②可逆的な状態であること
フレイルになっても自分次第で健常な状態に戻ることができるかもしれません。

▲フレイルサポーター養成研修テキストより

③多面的であること
フレイルは、趣味や外出などの「社会参加」、食や口腔の機能からなる「栄養状態」、筋力や体力などの「運動」と3本の柱から考えることが重要とされています。

▲フレイルサポーター養成研修テキストより

フレイルを予防するために、社会参加・栄養・運動の面からご自身の生活を見つめてみてはいかがでしょうか。

まず、社会参加ですが、冒頭でもお話した通り、外出したりお友達とおしゃべりをする機会は減ってしまっていると思います。
フレイルの入り口は“社会とのつながりが失われたとき”とも言われています。
今までと同じ活動ができなくても、時間帯や場所を選んで外出するだけでも社会とのつながりを保つことができます。

▲フレイルサポーター養成研修テキストより

どうしても外出が困難な場合は、ご家族やお友達と電話で話すことも有効です。

つぎに栄養ですが、バランスの良い食事をとることはもちろん、噛む、飲み込むといった口の機能を保つことも大切です。
食材や食事の内容だけではなく、口唇や舌、喉の運動も意識していただくと安全に食事を楽しむことができます。

▲フレイルサポーター養成研修テキストより

最後に運動ですが、以前にご紹介した運動を参考にしていただけると嬉しいです。

「外出制限の中、ご自宅でできる簡単な運動」をご紹介します!

以上のようなことに気を付けて、自粛が終わったらまた楽しく活動再開できるよう、感染対策の徹底とフレイル予防を両立させましょう。
リハビリテーション室でした。

2020年10月29日血友病のリハビリテーション

みなさん、こんにちは。
当院ではさまざまな疾患に対するリハビリを実施していますが、今回はその中から血友病のリハビリを紹介していきます。

早速ですが、みなさん“血友病”をご存じですか?
当院の血液凝固科には、全国の血友病患者さん6,517名(2019年5月現在)の10%を超える908名(2020年9月現在)の患者さんが登録されており、血友病診療ブロック拠点病院の一端を担っています。
ちなみに、血友病には“先天性血友病AまたはB”、“後天性血友病”がありますが、今回は先天性血友病についてお話していきます。

“血友病”とは

出血した際に血液を固める因子に異常があるため血が止まりにくい病気で、基本の治療は、血を固める薬(凝固因子製剤)を注射することです(くわしくはコチラ)。
出血は関節内で起こることが多く、その中でも肘関節・膝関節・足関節の出血が多い傾向にあり、血友病患者さんは関節に不安を抱える方も多く(血友病性関節症)、私たちリハビリスタッフも運動や日常生活動作指導の面から診療に参加しています。

“血友病性関節症”

同じ関節で出血を繰り返すと関節が破壊され、痛みが生じたり、関節の動く範囲(関節可動域)が狭くなったり、筋力低下を引き起こすなどして、関節機能に障害が起きた状態を指します。
出血直後は関節を安静に保つのですが、長期間安静にし過ぎることにより関節機能が低下し、悪循環を招きます。適切な時期にリハビリを始めて、関節機能を維持することが大切です(図1)。

図1.血友病性関節症が生じる経緯

関節可動域が狭くなると、日常生活にさまざまな支障を来たします。
関節が曲がらないことで困ることにどんなものがあるでしょうか。
いくつか例を挙げてみますので、想像してみてくださいね。

肘関節が曲がらない
→食べ物を口へ運ぶことが難しい、洗顔の時に手が顔に届かない、など。

膝関節が曲がらない
→椅子から立ち上がりにくい、しゃがめない、など。

足関節(足首)が曲がらない
→つま先が手前に曲がらない状態になると・・
立った時にかかとが床につかない、つま先歩きになる、階段を降りる動作が不安定になる、など。

血友病性関節症が進行し、日常生活に大きな支障をきたす場合は手術をするケースもあります。状態によりますが、人工関節置換術や滑膜切除術が主な治療となります。その際は手術翌日からリハビリを行います。

また、手術以外でも主治医が必要と判断した場合、外来でのリハビリを行っています。
リハビリでは、日常生活動作に必要な関節可動域の維持・改善、筋力強化を指導したり、歩き方など動作の指導をしたりして、関節に過度な負担をかけないようサポートしています。日常生活に大きな支障がなければ患者さんの生活の質も維持できるため、患者さん一人ひとりの生活背景などをお聞きして必要な指導を行っています。

ここではリハビリに関する内容のみでしたが、当院では医師、看護師、ソーシャルワーカー、臨床心理士など、多職種で患者さんをサポートしています。

以上、血友病リハビリの紹介でした。

2020年9月30日腰の手術前後のリハビリテーション

こんにちは。
今回ご紹介する内容は「腰の手術前後のリハビリテーション」についてです。

当院の整形外科では腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、腰椎すべり症、圧迫骨折等の疾患に対して、手術が行われています。
手術の翌日より体調に応じてリハビリを行い、身体機能の回復を図りながら自宅退院、社会復帰、趣味活動への参加を支援しています。
そこで今回は、当院で行っている腰の術前術後のリハビリの中から、ストレッチや筋力強化、姿勢チェック、動作の改善など、みなさんがご自宅でできるものをご紹介いたします。

以下に注意して、①~⑤までの項目を実際にやってみましょう!

  • 急な痛み・しびれ・違和感が出た際は直ちに運動を中止し、安静にしましょう。
  • 無理な運動は症状の増悪を招く可能性があるため、注意しましょう!
①姿勢チェック

座った姿勢・立った姿勢で背筋が真っすぐか確認します。この時に姿勢が前後左右に歪んでいる場合は関節や筋肉に負担をかける可能性があります。
鏡等を使用して全身の姿勢を観察してみましょう。

  • 前面
    ・両肩の高さはそろってますか?
    ・脊柱(背骨)は左右に傾いてませんか?

  • 側面
    ・頭部の位置は前後に傾いていませんか?
    ・脊柱(背骨)が前後に傾いてませんか? 悪い例:猫背・反り腰
②ストレッチング

股関節周囲の柔軟性改善は腰にかかる負担を軽減させます。
反動をつけずに背筋を真っすぐに保ち、息を吐きながらやってみましょう。

☆殿部(お尻)

  1. 座った姿勢で脚を組みます
  2. 背筋を伸ばしたまま、カラダを前傾します。
  3. 反動つけずに息を吐きながら行います。
  4. 伸びているところで20~30秒キープ×4セット。

☆大腿後面(ももの裏)

  1. 座った姿勢で片脚を前方へ伸ばします。
  2. 手で軽く押しながらカラダを前傾します。
  3. 反動つけずに息を吐きながら行います。
  4. 伸びているところで20~30秒キープ×4セット。

☆大腿前面(ももの前)

  1. 立った姿勢で脚を前後へ開きます。
  2. 背筋を伸ばして前脚に体重をかけていきます。
  3. 後ろ脚のもも前側が伸びている事を確認します。
  4. 伸びているところで20~30秒キープ×4セット。

③筋力強化

体幹・下肢の筋力強化でカラダを安定させます。この時も背筋を真っ直ぐに保ち、ゆっくり運動をしていきましょう!

☆ドローイン(腹筋の運動)

  1. 仰向けになり、両ヒザを立てます。
  2. 鼻から息を大きく吸い、口から息を吐きます。
  3. ゆっくりと長く吐くようにしましょう。
  4. 息を吐きながら下腹部又はヘソを引っ込めるようにします。
  5. 1.~4.を10回~20回×3セット繰り返します。

☆スクワット(もも・お尻の運動)

  1. 椅子の前に脚を肩幅開いて立ちます。
  2. 背筋を伸ばしてゆっくり腰かけるように屈みます。
  3. お尻をつけたら1.の姿勢に戻り、運動を繰り返します。
  4. ゆっくり10回~20回×3セット繰り返します。

☆もも上げ(ももの運動)

  1. 椅子に浅く座り、壁に両手をつきます。
  2. 1.の状態をキープし、左右のもも上げをします。
  3. ゆっくり左右10回~20回×3セット実施します。

④バランス訓練

バランス能力の強化で腰にかかる負担を軽減させます。また、転倒予防にも繋がります。
どこでもできますが、転倒には注意して実施しましょう!

☆片脚立位(片脚立ち)

  1. 立った姿勢で片脚立ちをします。
  2. バランスが悪ければ手すり等を使用してもOK。
  3. 左右10秒~20秒キープ×3セット実施します。
    ※左右の腰の高さ、上半身が傾かないように注意しましょう。

☆タンデム立位

  1. 脚を前後に開いて立ちます。
  2. バランスが悪ければ手すり等を使用してもOK。
  3. 左右入れ替えて10秒~20秒キープ×3セット実施します。

⑤動作チェック

動きの癖を今一度確認しましょう。腰を捻ったり、過剰に曲げたり、反ったりしないようしましょう。
ポイントとなるのは背筋が真っすぐに保つこと!

☆起き上がり動作

☆立ち上がり動作

☆しゃがみこみ動作

最後に

今回は「腰の手術前後のリハビリテーション」についてご紹介いたしました。
症状や経過は人それぞれ異なります。無理のない範囲で意識しつつ、リハビリを継続していきましょう。
以上、リハビリテーション室でした。

2020年8月18日「肺炎」のリハビリで気をつけていること

こんにちは! 内科・外科チームです!

今回は私達が対象としている様々な疾患の中から、『肺炎』で入院した方のリハビリについてご紹介します。

『肺炎』とは、肺の炎症性疾患の総称であり、主に細菌やウイルスなどが気道を介して肺に感染することで発症します。その結果、発熱したり、咳や痰が出たり、呼吸が苦しくなるなどの症状が出ます。

入院中のリハビリでは、医師が『離床』しても良いと判断した場合、ベッドで安静にするのではなく、血圧や自覚症状を確認しながら身体を起こして生活できるよう評価や指導を行います。『離床』とはベッドから離れることであり、座ったり歩いたりすることは、退院に向けたリハビリの一環としてとても大切なことです。

「ベッドがそこにあるからついつい寝てしまう」といった声が入院患者さんからしばしば聞かれますが、実は寝ているその姿勢には呼吸に悪い影響を与える可能性があるのです。

ヒトは寝ていると腹部の臓器が横隔膜を圧迫し、肺が拡がりにくくなります。また、ずっと寝た状態で身体を動かさないと、痰を排出できず気管支が閉塞することで『無気肺』が生じやすくなります。
※無気肺…何らかの原因によって肺の一部もしくは全体に空気が入っていない状態であり呼吸困難感などが生じます。腫瘍などによって気道が塞がれて生じる事が多いですが、それ以外でも生じます。

  • ●寝ていると・・・
  • ●起きていると・・・

※画像はイメージです

無気肺を生じると、肺胞は不衛生な状態となり細菌が増殖しやすくなります。その結果、肺炎の治りが悪くなるのです。

座位や立位になり『離床』することで、腹部臓器が重力によって下がり、横隔膜は圧迫から開放されます。その結果、胸郭が拡がりやすくなり換気量が増え、また痰も排出しやすくなります。

また『離床』は、筋力低下の予防や、起立性低血圧などの循環動態の改善、環境の変化で起きやすい『せん妄』を予防するというメリットもあります。
せん妄・・・病気や入院による環境や生活リズムの変化などで頭が混乱した状態。時間や場所がわからない、攻撃的な言動や独り言を話す、注意力や思考力が低下する、などさまざまな症状があります。うつ病や認知症と間違われることもあります。入院時のリハビリテーションには筋力維持だけでなく、規則正しい生活リズムを保つ効果があります。

このようなメリットを患者さんにお伝えしながら、入院中になるべく筋力低下を予防し、呼吸状態の悪化がないよう評価、指導していくことが私達リハビリスタッフの役目の一つです!

2020年7月15日完全オーダーメイド! スプリント療法

こんにちは! 作業療法士(OT)チームです!

今回は、私達OTが専門的に行っているスプリント療法についてご紹介したいと思います。

スプリントとは簡単に説明すると、患部を固定するための“装具”のことです。
荻窪病院は手外科センターが有名で、都内でも屈指の症例数・手術件数を誇っています。
そんな手のケガや病気を持った患者さん一人ひとりに対して、私達はオーダーメイドでスプリントを作成しています。
そこで普段私達が作成しているスプリントをいくつかご紹介したいと思います。

☆コックアップスプリント☆(手関節固定装具)


このスプリントは手の骨折や手根管症候群(手の神経の圧迫)など、手関節をしっかりと固定する必要がある患者さんに作成します。

☆サムスパイカスプリント☆(短対立装具)


このスプリントは母指CM関節症(親指の付け根の変形性関節症)や母指MP関節靭帯損傷など、母指をしっかりと固定する必要がある患者さんに作成します。

☆スタックスプリント☆(DIP関節伸展位固定装具)


このスプリントは突き指などで発症する末節骨骨折(指先の骨折)や腱損傷に対して使用する装具です。
他の装具と比べて約8週間24時間固定が必要となることが多く、精密な作成と入念な指導が不可欠となります。

☆作成風景☆
完全オーダーメイドです♪ 患者さんの手に沿う素材を使用しているため、ピッタリのものができます。スプリントが出来上がったら、患者さんに装着方法や生活上の細かな注意について説明することも大事な仕事です。また患者さんには定期的に来院して頂き、装具の修正や掃除なども行います。

手のケガや病気は、患者様の普段の生活に直接支障をきたします。そんな方々の力に少しでもなりたいと私たちOTは考えております!
より性能・見た目の良いスプリント作成のために、日々努力を積み重ねております。
(※装具作成には医師の診察・リハビリ処方が必要となります。あらかじめご注意ください)。

以上、リハビリテーション室でした。

2020年6月25日心臓リハビリテーションのご紹介

こんにちは! 心臓リハビリチームです!
今回は心臓リハビリテーションについてご紹介させて頂きます。

当院の心臓リハビリチームは、心筋梗塞や狭心症、心不全、弁膜症、大動脈解離、下肢閉塞動脈硬化症など循環器内科・心臓血管外科にご入院中の患者さんのリハビリを行っています。
投薬治療中やカテーテル治療後、手術後もリハビリをしています。
リハビリする場所は、集中治療室(ICU)や一般病棟、リハビリ室にて実施しています。

速やかで安全な社会復帰と再発防止を目的に行う心臓リハビリテーションは、患者さんの状態の把握がとても大切で、医師や看護師だけでなく他の職種とも連携し、情報共有しながらプログラムを検討しています。
どのくらい動いてよいのか、退院後の生活や運動はどうしたらよいのか、などの質問にリハビリを通してお答えしています。

ここで、実際にどんな物品を使ってリハビリしているのか、一部ご紹介させて頂きます。

まずは持ち運べる心電図モニター!

こちらの小さいモニターは、歩きながらでも心電図の情報が見られるようになっています。
運動中に不整脈がないか、心拍数の速さはどうか等の確認ができるので、リスク管理に必須アイテムです。

そしてエルゴメータ。

このエルゴメータ血圧や心拍を見ながら有酸素運動をしたり、運動負荷を決めたりしています。
当院では2019年9月より心臓リハビリテーション外来を始めており、退院した後もこのエルゴメータを使用して、定期的に有酸素運動を実施しながら日常生活のアドバイスをしております。

以上、簡単ですがご紹介とさせて頂きました。
次回は作業療法士による「スプリント療法」についてご紹介します!

2020年5月28日カラダを動かしましょう!【ヒットトレーニング編】

こんにちは。
今月も引き続き、運動不足解消のため自宅でもできるトレーニングを紹介します。

今回、ご紹介するトレーニングは「ヒットトレーニング」です。

「ヒットトレーニング(HIIT)」はHigh Intensity Interval Trainingの略で、有酸素性能力と無酸素性能力の両方へ最大負荷をかけ、短時間で行うトレーニング。
日頃運動されている方、アスリートの方にオススメなトレーニングになります。

トレーニング効果
  • 運動不足の解消
  • 基礎代謝の向上
  • 全身持久力の向上
トレーニング前の注意点
  • トレーニング前は準備体操、トレーニング後はストレッチ等を念入りに実施してください。
  • こまめな水分補給を行ってください。
  • カラダのコンディションが良くないときは実施しないでください。
  • 循環器、呼吸器、整形外科的に不安のある方は実施しないでください。
方法
  • ①下記のトレーニング種目から好きな種目を 3つ 選んでください。
  • ②《選択した3つの運動をそれぞれ 20秒間運動 → 10秒間休憩 = 1セット 》× 2周 実施します。
  • ③どの種目も 全力 で行うことがポイントです。

トレーニング種目

1.ジャンプランジ

  1. 姿勢を正し、両足を前後に開き、両ヒザを曲げます。
  2. 後ろのヒザを床の方向へ下げます。
  3. 下げた姿勢から素早く真上へ高くジャンプします。
  4. 空中で足の位置を前後入れ替えます。
  5. 足を前後に入れ替えた姿勢で着地します。
  6. 以上の動作を繰り返します。

2.バービージャンプ

  1. しゃがんだ姿勢になり、両手を床につけます。
  2. 足を後ろへ伸ばし腕立て伏せの姿勢となります。
  3. 1の姿勢へ戻ります。
  4. 真上へ高くジャンプします。
  5. 1~4の動作を繰り返します。

3.スクワットジャンプ

  1. 姿勢を正し、足幅は肩幅程度に開いて立ちます。
  2. しゃがみこみ、両手を床につけます。(つま先と膝が同じ方向を向くようにしましょう。)
  3. 真上へ高くジャンプします。
  4. 2~3を繰り返します。

4.縄跳び

  1. 両足飛びで出来る限り早く飛びます。

5.シッティングスクワット

  1. 椅子を準備します
  2. 姿勢を正し、足幅は肩幅程度に開いて、椅子の前に立ちます。
  3. イスに座るようにしゃがみます。(つま先と膝が同じ方向を向くようにしましょう。)
  4. 2~3を繰り返します。

6.マウンテン・クライマー

  1. 腕立て伏せの姿勢になります。
  2. 1の姿勢をキープしながら両足の足踏みをできる限り早く行います。
最後に

今回は運動強度の高いトレーニングをご紹介いたしました。
紹介したトレーニング以外にも多くの方法がありますので、自分のできるトレーニング種目を選択してください。
ちなみに、トレーニング後は栄養補給と睡眠をしっかり取りましょう。

以上、リハビリテーション室でした。

2020年4月30日リハビリテーション室ブログ、開始しました。
第1回目は「外出制限の中、ご自宅でできる簡単な運動」をご紹介します!

みなさんこんにちは。
リハビリテーション室です。
この度、私達が取り組んでいる事や疾病に関する事、最新の医学的情報などを発信していけたらと思い、ブログを開設いたしました。


▲昨年夏に移転し開放感のあるリハビリテーション室

昨今の新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急事態宣言を受け、様々な活動が自粛を余儀なくされ、不安な日々を過ごされている方が多いのではないでしょうか。
こんな時だからこそ、私達リハビリテーション室では専門職としてできることを発信していけたらと思っています。

現在、リハビリテーション室では感染予防対策として、皆様に入室時の体温測定と手指消毒をお願いしております。治療台、器具などは使用ごとに消毒を行っております。皆様に安心して、気持ちよくリハビリテーション室をご利用頂けるように気をつけてまいります。


▲スタッフももちろんマスク着用、手指消毒の上、患者さんと接しています

また、外出自粛が続き、身体を動かす機会が減って気持ちもふさぎ込みがちかと思います。
そこで今回は、心と体のリフレッシュになるような、ご自宅でできる簡単な運動をご紹介したいと思います。
院内感染予防のため、スタッフもマスクをして撮影しております。ご了承くださいませ。

運動を行う際は以下の4点に注意してください。

  1. ご自分の体調に合わせて、できるものを選んでください。
  2. 1回に行う目標回数を記載してありますが、状態に応じて増減してください。
  3. 痛みが出る場合は中止してください。
  4. バランスを崩して転ばないよう、必要に応じて椅子などにつかまってください。
では、実際にやってみましょう!

1.つま先上げの運動

方法
椅子に浅めに腰かけて足を少し前に出した姿勢でスタートです。
かかとを床に着けたまま、左右同時につま先を上げ下げします。
すねに力が入っていることを意識してください。
回数:1回につき10~20回程度

2.かかと上げの運動

方法
椅子に浅めに腰かけて、つま先を床に着けたままかかとを上げ下げします。
左右同時にかかとをしっかり持ち上げましょう。
ふくらはぎに力が入ります。
回数:1回につき10~20回程度
*立ってできる方は、椅子の背につかまりながらかかと上げをしてみましょう。

3.ひざを伸ばす運動

方法
椅子に深く腰かけて、足を浮かせながらひざを伸ばします。
ひざをしっかり伸ばした後、ゆっくり元に戻します。
ももが椅子から持ち上がらないこと、勢いをつけないことを意識して、左右別々に行いましょう。
ももの前の筋肉を使います。
回数:1回につき10~20回程度

4.椅子からの立ち上がり

【両足バージョン】
方法
椅子に座り、両手を胸の前で交差させます。
手の力を使わずに立ってみましょう。
回数:1回につき10回程度

【片足バージョン】
方法
椅子に座り両手を胸の前で交差させ、片足を浮かせます。
片足を浮かせたまま立ち上がってみましょう。
回数:1回につき5~10回程度

*両足/片足バージョンともに椅子の高さが高いほど立ち上がりやすく、低いほど立ち上がりが難しくなります。
手を使わずに立ち上がることが難しい場合は、椅子の縁に手をついて立ってみましょう。
片足バージョンはバランスを崩しやすく、転倒のリスクが高くなりますので要注意です!
<ワンポイント>
椅子に浅く腰かけて、支えとなる足を少し後ろへ引くと立ち上がりやすくなります。
日々の立ち上がり動作にも応用できますので、ぜひやってみてくださいね。

5.片足立ち

方法:椅子の背につかまって片足で立ちます。
グラグラしないようにおなかやおしりにも力を入れましょう。
足の裏全体で体を支えましょう。
足の指が浮いたり、小指側ばかりに体重がかかったりしないように意識してみてください。
回数:10~30秒保持を左右各3~5回程度

*可能な方は椅子につかまらずにやってみましょう。転倒には注意してくださいね。

5つの運動すべてを一度に続けて行う必要はありません。
その時々で無理なくできる運動を選んで行ってみてください。
つま先上げやかかと上げの運動はテレビを観ながらでもできますよ。

また、東京都理学療法士協会のホームページにも「自宅でできるリハビリ」が掲載されております。
よろしければご覧ください。

公益社団法人 東京都理学療法士協会
URL:http://www.pttokyo.net/info/jitaku

力をつけるためには、運動だけでなくバランスの良い食生活を送ることやしっかり睡眠をとることも大切です。
ストレスのかかる日々ですが、みなさんの生活に運動を取り入れて少しでも気分転換につながれば幸いです。
リハビリテーション室でした。


▲天気の良い日はスカイツリーが望めます

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