TAVIは、重度の大動脈弁狭窄症に対するカテーテル治療です(保険適用)。
開胸することなく、また心臓を止めずに、太ももの付け根などの血管からカテーテルを使って人工弁を患者さんの心臓まで運び、留置する手術です。
傷口が小さく、人工心肺を使用しなくてすむことから、体への負担が少なく入院期間も比較的短いのが特徴です。
経大腿アプローチの例
経大腿アプローチは、太ももの付け根の血管から挿入します。
提供:エドワーズライフサイエンス合同会社
鉛筆ほどの太さに折りたたまれた生体弁を装着したカテーテルを、大ももの付け根の1cm弱の小さな穴から大腿動脈に入れて、心臓まで運びます。
生体弁が大動脈弁の位置に到達したらバルーン(ふうせん)を膨 らませ、生体弁を広げ、留置します。
生体弁を留置した後は、カテーテルを抜き取ります。
生体弁は留置された直後から、患者さんの新たな弁として機能します。
提供:エドワーズライフサイエンス合同会社
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自宅から近くて通いやすい、フォローアップも万全な荻窪病院へ
これまでは遠方の大学病院などの都市部ではなく、ご自宅から近くて通院しやすい当院で治療が可能となりました。
また、治療後は他科と連携し、フォローアップもそのまま当院で継続いたします。
対象となる方
重症の大動脈弁狭窄症の患者さんに対して行う手術です。
TAVIの対象となるのは、概ね80歳以上の方です。
現在日本では75歳未満の方は外科的弁置換が推奨されています。
75歳以上、80歳未満の場合は個々の患者さんの背景と解剖学的な特徴のバランスを調査し、どちらの治療を行うか相談して決定します。
例えば過去にバイパス手術などの開胸手術を受けたり、胸部の放射線治療を受けた方、肺疾患や肝硬変を合併している方などは外科的弁置換よりもTAVIが有利になります。
実際にTAVIが適しているかどうかは、様々な検査をした上で患者さんとハートチームで相談して決定していきます。
提供:エドワーズライフサイエンス合同会社
TAVIのここが知りたい! Q&A
- 心臓を止めずにカテーテルで人工弁を置くということですが、安全なのでしょうか。
- 心臓が強く動いている状態では弁が押し出されてしまい正確に留置できません。
そのため実際に弁を留置する際にはペースメーカーで脈を速くして血圧を下げることで狙った位置に弁が留置されるように治療が行われます。 - 人工弁を留置後、古い弁はどうなるのでしょうか。
- 自分の弁はバルサルバ洞という場所に収納されてその役割を終えます。
バルサルバ洞が小さい場合や、心臓の栄養血管である冠動脈の起始部が低い場合には自分の弁を収納しきれず、冠動脈の血流に影響を及ぼす可能性がありますので注意が必要です。 - 人工弁は何年持ちますか。
- TAVI弁は8~10年まで外科的生体弁と遜色のない耐久性であることがわかっています。
さらなる長期的なデータは今後明らかになります(2024年現在)。
なお、昔から一般的に外科的生体弁の耐久性は10~15年程度と言われています。 - この治療に向いてない方はどういう人ですか。
- 弁周囲の石灰化が強すぎてTAVIが危険と考えられる場合、冠動脈病変を併せ持っており、冠動脈バイパス手術を同時に行った方が良い場合、他の心臓手術を同時に行った方が良い場合、大動脈の性状が悪かったり大腿動脈の血管径が小さい場合などが考えられます。
- 年齢が若くてもTAVIを受けられますか。
- 大動脈弁狭窄症は一般的に高齢になってから出てくる病気です。
若くして大動脈弁狭窄症になる方は2尖弁という生まれつきの問題の可能性がありますのでよく調べる必要があります。
前述のように75歳未満で外科的弁置換が可能な方は外科的弁置換が推奨されています。
75歳以下でも外科手術に耐えられない並存疾患がある場合にはTAVIも検討されます。 - おおよその入院期間を教えて下さい。
- 現時点では約1週間としています。
今後はより短い入院期間になると予想されますが、早く退院するのが心配で少しリハビリをしたい方の場合でも、通常は翌日から歩行可能なので、1週間は十分と思います。 - TAVI治療に健康保険は適用されますか。また、費用はどのくらいですか。
- TAVIの治療には健康保険、高額療養費制度が適用されます。
高額療養費制度を使うと、月額自己負担限度額は年齢や所得によって異なりますが、およそ5万~20万円です。
※上記金額は入院日数によって異なります。
※部屋代・食事代は別途必要です。
TAVIが加わり、大動脈弁疾患の治療法がさらに広がりました
様々な理由でTAVIに不適合の場合がありますが、当院では心臓血管外科による大動脈弁再建術(AVNeo)の選択肢もございます。
これまで同様、患者さんにとってのベストの治療法をチームで相談、決定しています。
また、TAVI弁の耐久性は、外科的生体弁に遜色のない成績が報告されてきています。