HIV感染の方の体外受精に関して
当科は男性HIV感染者と陰性の配偶者のご夫婦の挙児相談の窓口になっています。
相談のお申し込みはまずはメールで伺っています。
なお、女性感染者の挙児希望相談については、国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センターが窓口になっております。
相談のお申し込みはまずはメールで伺っています。
なお、女性感染者の挙児希望相談については、国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センターが窓口になっております。
(Gmailなどブラウザメールをご利用の方は dr_qa_kojima@ogikubo-hospital.or.jp へお送りください。)
5営業日たっても返信がない場合は、血液凝固科外来(病院代表03-3399-1101)までお電話ください。
※書ける範囲、話せる範囲でお申し込みが可能です。
- 荻窪病院で実施するのでしょうか
- 実施施設は、東京医科大学病院のほか関西の1施設です(2022年7月現在)。まずは「荻窪病院血液凝固科」へご相談ください。費用に関して43歳未満の奥様につきましては保険診療で行われる不妊治療と変わりません。ご主人様につきましては精子洗浄費用などで、自費診療となります。なおほかにも遠方にお住まいの方は旅費と奥様の2週間の滞在費が必要となることがあります。最新の状況は相談時にくわしくお話しいたします。
- どのような方法でウイルス除去するのですか? 簡単に説明してください。
- 精液の中には精子、白血球、ウイルスの他に前立腺液・精嚢液・金属結晶や尿道通過時の雑菌など様々なものが含まれており、以下の方法でウイルス除去を行っています。
1 精液を希釈して精子より重い成分を沈殿させて除去し、次に上層の精子浮遊液を特殊フィルターに通して大きなゴミや細胞片などを取り除きます(A液)。 2 濃度を変化させたパコール液やシルセレクト液の上にA液を上に乗せ、遠心分離機に入れます。すると白血球、不完全な精子、ウイルスなどは下まで行かず、途中に浮きます。 3 底にある精子だけを回収します(B液)。B液の上に精子だけが登る性質を持つ液体を加えます。 4 泳いで上がってきた精子だけを回収します(スイムアップ法)。 - 安全性は十分ですか?
- パコール法とスイムアップ法を組み合わせて洗浄し、それを共同研究者の慶應義塾大学微生物教室が開発した超高感度検査を使ってウイルスが1つもいないことを確認するなど、現在、考えられる限りの安全策をとっています。
- 体外受精に参加できる条件はどのようなものでしょうか? *1
- 以下の点にご注意ください。なお感染経路は問いません。
1 法定婚であること(ただし常識の範囲において実施時点で婚姻関係が成立すると予想される場合は相談に応じます)。 2 夫婦双方の自発的な希望であり、合意があること。 3 妻がHIV抗体陰性であること。 4 その他、常識的な範囲で妊娠・出産・育児に関して支障のある状況・事情がないこと。 - 妊娠率、成功例はどのくらいですか?
- 女性の年齢や体調によっても異なります。通常の人工授精の比率はトップレベルの病院でも1回の治療あたり、妊娠率:40%前後、出産までですと25~30%程度です。全国平均では妊娠率は15~20%程度ともいわれています。しかし、今回の場合は女性側に不妊要因があって行うわけではありませんので、妊娠率はもっと高いのではと考えています。各事例についてはプライバシーの問題がありますので詳細はご紹介できませんが、今まで実施された70%以上の方が顕微授精で妊娠されています。1回での妊娠率は約50%前後と高く、不妊傾向が少ないことなどが良い結果になっているのではと考えています。もちろん感染例は全くありません。
- 実施までの期間どれくらいでしょうか?
- 順調にいった場合、数ヵ月で実施できると考えています。しかし、実際には夫の都合、妻の身体的なリズムや仕事の都合などで実施までの時間が決まることが多いので、一概には言えません。
- 夫の都合とはどういったことが考えられますか。具体的に教えてください。
- HIV感染が進行すると健康な精子の数や運動率が減るとも言われています。また抗HIV薬の服用によってもさらに減る危険性もあります。また緊張下の精液採取はやはり精子数が減りやすいものです。つまり「一度、精液採取すれば終わり」ではない場合もあり、足りない場合は、何度か通院しなくてはならなくなります。仕事が休みにくい方も大変です。
また服用中の薬の一部に精子に影響する薬物があり、そうした疾患の治療状態も考慮しなければならないことがあります(例.C肝炎治療薬リバビリンなど)。 - 妻の都合とはどういったことが考えられますか。具体的に教えてください。
- 夫同様、仕事を持っている方は、実施のための時間を作るのが大変です。特に2週間毎日、実施施設にホルモン注射のために通院する必要があります。しかも、その2週間をいつにするかは各女性の月経のリズムによっても決まりますので、仕事の都合だけでは決められません。さらに同僚、上司、近所や妻の親などに対して、場合によっては口実を考えなくてはいけませんので、そのあたりも苦労です。ただ、地元の産婦人科との連携を取っていければそこで半分の期間は排卵誘発剤を投与できます(奥様の体調もあり、一概には言えませんが…)。
- 感染の危険の他、妻には危険はないのですか?
- 体外受精に関わる体への負担については、実際、かなりかかると思われます。排卵誘発の注射も痛みを伴いますし、排卵誘発に先立って点鼻薬(GnRHアゴニスト)を使用する場合には更年期様症状が出てくることもあります。また、もっとも大きな問題は卵巣過剰刺激症候群(OHSS)と呼ばれる症状で、これが生じると腹水がたまる等、専門医による慎重な対応が必要になります(このあたりは実施施設の専門医が診てくれます)。
また卵子の採取のことを採卵(oocyte pick up:OPU)と呼びますが、この際にはたいていの病院で麻酔を用います。麻酔については局所麻酔で十分ですが、痛みに弱い方や病院によっては静脈麻酔や腰椎麻酔を用います。昔は全身麻酔で何日も入院させる病院もあったようですが、現在は日帰りでの採卵が大半です。 - 最後に具体的な手続きをまとめてください。
-
1 *1の参加条件を満たしているかご検討ください。 2 主治医に依頼して紹介状を作成してもらう。
・服薬の有無や検査値等。
・妻の婦人科的な問題もチェックしてあれば添付。
・妻のマイナスを最後に確認した時期も分かれば添付。3 特に遠方の場合は荻窪病院血液凝固科外来か小島カウンセラーにメールで連絡を取り、同院血液凝固科の予約手続きを行ってください。 4 夫婦で来院。説明を聞くだけならお一方でもかまいません。ただし、二人の意思確認がそろわないと次に進めません。 5 医師の診察を受ける他、カウンセラーや担当ナースが手技の説明や個別に意思確認を行います。夫は精子の検査を受けます。 6 妻の基礎体温の検温は早くから開始しておいてください。 7 精子検査の結果を確認した上で、実施時期、実施施設との調整を開始します。
・健康な精子数が少ない場合は数回、採取を行わなければならないことがあります。
・実施施設を受診して頂き、そこでの心身状態のチェックと同意の確認。
ここでも同様な手続きが繰り返されます。
お子さんの問題でもありますから、かなり慎重に進めていることをご了承ください。8 ・妊娠後の受け入れ病院の選定等
・夫婦での同意書の記載9 実施日の2週間前から実施施設において卵採取のためのホルモン注射を行います。この期間病院に毎日通院することが必要となります。自宅から遠い場合は、宿泊も必要になります。受け入れ医療機関の全面的な協力が得られれば、最初の一週間程度を受け入れ施設で注射できます。 10 実施。採卵し、事前に洗浄し検査済の精子を使って体外受精を行います。採卵2日後に再度ウイルスが検出されないことを確認して、胚移植をおこないます。 11 実施後は選定した受け入れ医療機関で妊娠継続をします。