無痛分娩(硬膜外麻酔)による
安心の出産
痛みを和らげ、リラックスした状態であなたらしいお産を応援します

当院での無痛分娩の対象となる妊婦の方
当院での分娩予約をされた方(妊娠30週目以前の方)で、現在は経産婦の方を対象としています。
初産の方、医学的ハイリスクと判断された方*、緊急時に口頭での意思疎通が困難な方などは、無痛分娩の対象外としています。
また、妊娠経過中の状況で適応外と判断する場合もあります。現在、妊娠30週目以前の方を対象に、無痛分娩のご相談を承っております。
*ハイリスクと判断される方の例
・子宮筋腫核出術や帝王切開術などの子宮の手術歴がある方
・脊椎手術後や脊柱側弯症と診断されている方
・妊娠前BMIが30以上である方 等
当院の無痛分娩の特徴
- 全例計画分娩で行います。
- 水曜日(予備日は木曜日)に行います。
- 麻酔は当院の麻酔科医師が行います。
- 計画無痛分娩日以外の無痛分娩は行うことができません。
費用について
通常の分娩費用に加えて、約15万円ほどかかります。
※分娩方法については、母子の安全を最優先に判断いたします。
※帝王切開に変更となった場合でも、無痛分娩費用は発生いたします。
無痛分娩とは?
硬膜外麻酔を用いた安心の出産法
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痛みをやさしく和らげます
背骨の神経近くの「硬膜外腔」に局所麻酔薬を注入し、痛みの信号が脳に伝わるのをブロックします。
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完全な無痛ではありません
痛みが2割程度にまで軽減し、子宮の収縮感覚は残るため、出産の進行を感じながら主体的にお産に臨めます。
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母子への負担を軽減
麻酔薬が赤ちゃんに与える影響は極めて少なく、母体のストレスや疲労を抑えることで安全なお産をサポートします。
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麻酔科専門による安全管理
適切な管理下で行われる安全な医療行為です。産科医と麻酔科医が連携し万が一の事態にも備えています。
無痛分娩の主なメリット
無痛分娩は、痛みを和らげるだけでなく、母子双方にとって多くのメリットがあります。

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痛みの軽減によるストレス緩和
- 強烈な痛みと恐怖心を大幅に和らげます
- 国立成育医療センターの調査では、多くの方が痛みが2割程度にまで軽減したと回答
- 精神的なストレスを軽減し、落ち着いて出産に臨めます
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体力の温存と産後の回復サポート
- 痛みに耐えるための体力消耗を抑えられます
- 産後の育児に向けて体力を温存できます
- 産後の回復が早まる効果も期待できます
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赤ちゃんへの影響が少ない
- 硬膜外麻酔は下半身に局所的に作用しますので、意識はクリアです
- 麻酔薬が胎盤を通じて赤ちゃんへ与える影響は極めて少ない
- 産まれてすぐに赤ちゃんと対面し、授乳することも可能です
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緊急時の迅速な対応
- 分娩中に緊急帝王切開が必要になった場合でも対応可能
- 妊娠高血圧症候群など特定の合併症を持つ妊婦さんにも医学的メリット
硬膜外麻酔のしくみ
麻酔の原理
硬膜外麻酔は、出産時の痛みが脳に伝わる経路を一時的に遮断することで、陣痛を効果的に緩和します。
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痛みの伝達経路
出産に伴う痛みは、背骨の中を通る神経(脊髄)を介して脳に伝達されます。
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カテーテル挿入
脊髄を覆う硬膜の外側にある「硬膜外腔」に細くて柔らかいカテーテルを挿入します。
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局所麻酔薬の投与
カテーテルから局所麻酔薬を注入し、痛みの信号が脳へ伝わるのをブロックします。
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効果と感覚
腰から下の感覚が鈍くなり痛みは和らぎますが、意識はクリアに保たれます。赤ちゃんが下りてくる感覚や子宮の収縮はある程度感じられます。
ご存知ですか?
- 麻酔は下半身を中心に作用するため、意識がなくなることはありません。
- リラックスした状態で、主体的にお産を進めることができます。
- 産まれてすぐに赤ちゃんと対面し、授乳することも可能です。
※主治医の判断によっては脊髄くも膜下麻酔併用となる可能性があります。
解剖図で見る硬膜外麻酔
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管付近の拡大図*
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背骨の断面図*
*日本産科麻酔学会ホームページより引用
カテーテル挿入の手順
- 背中を丸める姿勢をとります
- 皮膚の消毒と局所麻酔を行います
- 専用の針を使って硬膜外腔にアクセスします
- 針を通してカテーテルを挿入し、針を抜きます
- カテーテルを固定し、麻酔薬を注入します

無痛分娩の流れ
準備
- 妊娠中の健診で無痛分娩の希望を30週目までに医師に伝えます
- 妊娠34週頃に血液凝固機能などの採血検査を実施
- 入院前に麻酔科の説明があります
計画分娩の予定で入院
当日の流れ
カテーテル挿入
- 朝から分娩監視装置と母体のモニター装着
点滴ルートの確保と無痛分娩の準備です - 横向きで膝を抱え、背中を丸める姿勢をとります
- 背中の部分を消毒し、皮膚に局所麻酔
- 医師が硬膜外腔に針を進め、カテーテルを挿入
- 針を抜き、カテーテルをテープで固定
麻酔薬の投与
- 少量の麻酔薬をテスト投与し安全性を確認
- PCA(患者自己調節鎮痛)ポンプで麻酔薬を持続注入
- ベッド上で安静にして効き具合や副作用を観察
- 分娩が進行するにつれて調整
分娩後
- 出産完了後、麻酔薬の投与を中止
- お母さんの状態が安定したらカテーテルを抜去
- 麻酔の効果が薄れ、足の感覚や運動機能が回復
- 回復確認後、歩行が可能になります
安心のサポート体制
専門医チームの連携

産科医
分娩の進行状況を正確に判断し、最適なタイミングで麻酔科医と連携します。
麻酔科医
麻酔の開始タイミング、薬剤の種類や量を最適に調整し、安全を確保します。
助産師
分娩の進行をサポートし、お母さんの状態を細やかに観察。医師との重要な架け橋となります。
安心モニタリング
母子の状態をリアルタイムで監視し、わずかな変化も即座に察知します。
- お母さんの監視項目
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- 血圧の変化
- 心拍数
- 酸素飽和度
- 赤ちゃんの監視項目
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- 胎児心拍数の変動
- 胎児の状態評価
緊急時の対応
- 緊急時の対応プロトコルを整備し、全スタッフが迅速に行動できるよう定期的な訓練を実施しています。
- 緊急帝王切開が必要な場合、全身麻酔に切り替え、迅速に対応します。
※緊急度によっては硬膜外カテーテルまたは脊髄くも膜下麻酔に切り替える可能性があります。 - 副作用発生時の速やかな対応体制を常に準備(血圧低下には昇圧剤等で対応)しています。
よくあるご質問
無痛分娩について、多くの方が気になるポイントをまとめました。
リスクはありますか?
一般的な医療行為と同様に、副作用や合併症の可能性はありますが、多くは一時的かつ軽度です。
- 血圧低下:点滴や薬剤で速やかに対応可能
- かゆみ:一時的で自然に軽快することが多い
- 頭痛:発生率は約1%と稀で、多くは安静で改善
重篤な合併症の発生頻度は極めて稀です。当院では万全の体制で安全管理を行っています。
赤ちゃんへの影響は?
硬膜外麻酔は下半身に局所的に作用するため、赤ちゃんへの影響は極めて少ないとされています。
- 麻酔薬が胎盤を通じて赤ちゃんに移行する量はごくわずかです
- お母さんの意識はしっかりしているため、産まれてすぐに対面・授乳も可能です
- むしろ母体のストレス軽減により、子宮や胎盤への血流が安定する利点も
母体と赤ちゃんの状態を常に監視し、安全を最優先に管理しています。
他の方法との違いは?
無痛分娩は自然分娩と帝王切開の中間的な特徴を持っています。
自然分娩との違い
陣痛の痛みを大幅に軽減でき、リラックスした状態で分娩に臨めます。体力の消耗も抑えられるため、産後の回復が早い傾向があります。
帝王切開との違い
経腟分娩であるため、帝王切開に比べて母体への身体的負担が少なく、回復も早いです。
その他のご質問やご不安な点は、診察時に医師・助産師にお気軽にご相談ください。
スタッフより

安心して出産に臨めるよう、全力でサポートいたします
私たちは産科医、麻酔科医、助産師が一つのチームとなり、お母さんと赤ちゃんの安全を24時間体制で見守ります。
無痛分娩の経験豊富なスタッフが、あなたの希望に寄り添い、痛みの不安を和らげながら、大切な出産の瞬間をサポートします。
寄り添うケア
一人ひとりの希望に合わせた出産プランをご提案します
安全への取り組み
緊急時にも迅速に対応できる体制と訓練を整えています
丁寧な説明
疑問や不安に思うことは何でもご相談ください
- 無痛分娩マニュアル(PDF/183KB)
- 無痛分娩看護マニュアル(PDF/180KB)
- 施設情報(PDF/108KB)
- 無痛分娩同意書、無痛分娩説明書(PDF/325KB)
- 無痛分娩麻酔同意書、無痛分娩麻酔説明書(PDF/355KB)
「無痛分娩の安全な提供体制の構築に関する提言」に基づく自主点検表は全て満たしております。