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疾患解説 手外科センター

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外傷・外傷後遺症

手のケガは、早めの診断・治療方針の決定が大切です。特に、まだ骨が成長過程にあるお子さんは早期の対応が必要です。
ここでは骨折などの外傷の患者さんの治療例を紹介します。

橈骨遠位端骨折(とうこつえんいたんこっせつ)

手首の骨折
高齢者が転倒したり、青壮年でも交通事故やスポーツ外傷として生じます。非常に多い骨折のひとつです。高齢者ではある程度変形した状態で癒合しても生活に支障が残らない場合もありますが、活動性が高い方はなるべく変形を残さない治療法を選択します。転位した(ずれた)骨折を整復して(よい形に戻して)プレートで固定する手術がスタンダードな治療となっています。

  1. 術 前

  2. 術 後

橈骨遠位端骨折変形治癒(とうこつえんいたんこっせつへんけいちゆ)

手首の骨折の経過観察後に、要手術となったケース
変形が大きかったり、手をよく使用される方や活動性の高い方は、疼痛や可動域制限が残って手術を要することがあります。変形癒合した橈骨を骨切りして矯正し、プレート固定します。矯正すると骨欠損が生じますので、骨移植(通常は自分の腸骨を利用します)して欠損を埋めます。

  1. 術 前

  2. 術 後

舟状骨偽関節(しゅうじょうこつぎかんせつ)

手根骨のひとつである舟状骨の骨折を放置していたために、偽関節になったケース
舟状骨骨折は骨癒合しづらい骨折のひとつです。適切な初期治療をおこなっても骨癒合しないケースもあります。骨癒合しないまま長期放置すると手関節全体に影響が出ると言われています。骨折部をリフレッシュして、骨欠損には骨移植をして、スクリューなどで固定します。

  1. 術 前

  2. 術 後

骨性マレット(こつせいまれっと)

突き指により第一関節が骨折して手術適応となったケース (▼腱性マレットについてはコチラ)
ボールなどで突き指した際に生じる骨折です。骨折を伴う場合と伴わない場合があり、骨折のズレが大きい場合や関節が亜脱臼している場合には手術をおすすめしています。受傷早期ならば、多くの場合、皮膚切開せずにワイヤーを用いて骨折を安定させます。1ヵ月強でワイヤーを抜去して、動かす練習を開始します。多少の伸展制限が残ることが多い外傷です。

  1. 術 前

  2. 術 後

骨性マレット(こつせいまれっと)・陳旧例

突き指の腫れがひかず、手術適応となったケース (▼腱性マレットについてはコチラ)
放置していた、あるいは治療していたけどだんだんズレてきた、などの理由で当院受診が遅れることが少なくありません。陳旧化すると、皮膚切開して、骨折部をリフレッシュする必要があります。その上で、転位した(ズレた)骨片を許容範囲の位置に整復し、ワイヤーやプレートで固定します。

  1. 術 前

  2. 術 後

内反肘(ないはんちゅう)

骨折により変形してしまった肘を手術で矯正治癒したケース 
肘周囲骨折の後遺症で腕が変形することがあります。「外観さえ気にしなければ機能的には問題ない」と昔は考えられていました。しかし最近は、長期に変形した状態だと、変形性関節症、尺骨神経麻痺(肘部管症候群)、外側側副靱帯機能不全など、疼痛やしびれで日常生活に支障が生じるケースが知られています。ケガしていない腕と比べて20°以上の差がある場合に矯正手術を行うことがあります。

  1. 術 前

  2. 術 後

手根管症候群

中高年の女性に多く、親指、人差し指、中指がしびれる手根管症候群。重症例を除いて、当院では入院せず、局所麻酔で手術しています。

内視鏡下手根管開放術(ないしきょうかしゅこんかんかいほうじゅつ)

内服、安静、夜間固定、ブロック注射などの治療を行っても3-6ヵ月以上症状が持続している場合や、すでに筋萎縮がある(筋肉がやせている)場合には、手根管開放手術をおすすめしています。
手根管開放術には、多くの施設で行われている直視下手術の他に内視鏡を用いる手術があります。当院では筋萎縮が出現していない症例には内視鏡下手根管開放術を行っています。内視鏡手術にもメリットとリスクがありますので、診察時におたずねください。重症例では、手根管開放術に加えて、母指対立再建術を同時施行することがあります。その場合は入院したうえでの手術になります。

変形性関節症

手指や肘の変形性関節症に対して、関節温存が難しいと判断した場合は人工関節に置き換える手術を行うことがあります。入院期間は3-5日程度です。
両手を行う場合は、期間をおいて行います。

環指PIP人工関節置換術、中指DIP関節固定術

PIP関節(いわゆる第2関節)を人工関節に置換しています。疼痛を軽減できる手術です。しかし指の動きは正常には戻りません。まだ手を握れる場合には、手術を受けるかよく相談する必要があります。写真の症例ではDIP関節(いわゆる第1関節)の関節固定術も同時施行しました。

  1. 術 前

  2. 術 後

スポーツ障害

野球肘やテニス肘といったスポーツ障害の治療も行っています。

外側型野球肘に対する肋骨肋軟骨移植術(ろっこつろくなんこついしょくじゅつ)

野球肘は過負荷による肘関節のスポーツ障害であり、治療の基本は投球禁止や体幹・肩甲帯のコンディショニングです。それでも症状が残る場合には手術を行うことがあり、いろいろな術式が報告されています。外側型野球肘に対して、当院では病期に応じて骨釘移植術や肋骨肋軟骨移植術を行っています。術後8-12ヵ月でのスポーツ復帰を目指しますが、実際にはレントゲンおよび疼痛・可動域の具合を見ながら判断します。

関節リウマチ

関節リウマチは全身の病気ですので、投薬など内科的治療が必要です。それでも残存する障害に対して手術を行うことがあります。

人工肘関節置換術

  1. 術 前

  2. 術 後

示指中指MP関節人工関節置換術、小指関節固定術

  1. 術 前

  2. 術 後

保存的療法の疾患

当院では以下の疾患は、まず注射や装具での保存的な治療を行っています。

ばね指

当院ではトリアムシノロンアセトニド腱鞘内注射で治療しています。紹介元でステロイド注射を施行されていても、トリアムシノロンアセトニドでない(と思われる)場合には当院で再度注射することが多いです。ただし連用は避けるべきと考えています。トリアムシノロンアセトニド注射の間隔は4-6ヵ月開けるように留意して、再発を繰り返す場合には手術を行っています。

ガングリオン

手術しても再発が多いことは広く知られています。有痛性のガングリオンは手術することもありますが、穿刺しても再発を繰り返す、あるいは外観を理由とした手術はおすすめしていません。強く手術をご希望なさる場合、切除術が根治を保証するものではなく、再発率が高いことを十分説明し、ご理解いただくよう努めています。

伸筋腱脱臼

発症直後の急性期に受診された場合は、まずMP関節(いわゆる第3関節)伸展位で伸筋腱が整復位にあることを視診あるいはエコーで確認します。整復位と判断すれば保存的に治療しています。MP関節を伸展位で4週間固定し、PIP(いわゆる第2関節)・DIP関節(いわゆる第1関節)は自動屈伸を許可します。
クリックを伴うような脱臼が残存した場合には後日再建手術を考慮します。

腱性マレット指

受傷後1ヵ月くらい経過していてもまず保存療法を試みています。手術療法も保存療法も成績に差がないとされているからです。既製品のStack splintあるいはOT作成の装具でDIP関節(いわゆる第1関節)を伸展位、できればやや過伸展位で約2ヵ月固定します。その後、自動屈伸を開始しますが、夜間のみ固定を1ヵ月以上継続します。6ヵ月経過してもADL支障があるほどの伸展障害が残存するならば手術を考慮します。

PIP関節掌側板裂離骨折(過伸展損傷型)

伸展位で関節適合性が保たれていて、陥没骨折を合併しないものは多少の掌側骨片転位があっても保存的治療を原則としています。偽関節となっても臨床上問題とならないことが多いからです。疼痛が改善するまでの1-2週間、完全伸展位で固定し、その後積極的に自動運動を行います。屈曲拘縮となることを避けるため、夜間のみ伸展位固定を1-2カ月継続します。成人例では多少の伸展制限が残りますが、あまり日常生活での支障になりません。

基節骨基部骨端離開(Salter-Harris 2型)

ほぼ徒手整復可能であり、指交差を含む機能障害が残存することは稀です。徒手整復後はナックルキャスト固定にバディーテーピングを併用して早期に自動運動を開始します。MP関節(いわゆる第3関節)伸展位拘縮や回旋変形を防ぐため、アルフェンスシーネで伸展位固定することは慎むべきです。

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